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【識者の眼】「病院経営と地域医療」小野 剛

登録日: 2026.01.08 最終更新日: 2026.01.08

小野 剛 (市立大森病院院長、全国国民健康保険診療施設協議会会長)

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今、地域医療を支える病院の経営が危機的状況を迎えている。厚生労働省が公表した2024年度の医療機関経営に関する調査では、病院は平均2億円を超える赤字で、利益率も−7.3%、さらに一般病院の約6割が赤字に陥っていることが示された。また、2025年9月の総務省の報告によれば、公立病院の2024年度決算では83.3%の病院が赤字であった。公立・公的・民間、規模の大小にかかわらず、日本全域で地域医療を担う病院の経営はきわめて厳しい状況にある。

高齢化と人口減少が進む地域の中小病院の院長となり30年が経つが、当院も新型コロナ流行期に種々の補助金があった時期を除き、これまでにない厳しい運営状況に直面している。多くの病院も同様と思われ、その要因として、人口減少に伴う外来・入院患者の減少による病床稼働率の低下、材料費や医薬品費の高騰、医療業務委託料や医療機器保守点検料の上昇、さらに職員人件費の増加など、複数の要素が重なり医業費用が増加していることが挙げられる。特に病院規模が大きいほど赤字幅が拡大する傾向があり、人件費増が大きな要因と考えられる。

この状況が続けば、持続可能な地域医療提供体制の維持は困難となり、「保険あって医療なし」となる地域が出かねない。実際、帝国データバンクの調査では、2025年上半期の医療機関の倒産は35件に達し、過去最多のペースで推移している。こうした事態を受け、各病院団体は国に「病院への緊急財政支援についての要望」などを提出し、政府は2025年11月に約1.3兆円規模の「医療・介護等支援パッケージ」を盛り込んだ2025年度補正予算案を閣議決定した。この対応は地域医療を担う医療機関にとって心強く、2025年度は一定の安堵が得られると感じている。

しかし、今後も人件費を中心に費用増が続くことは避けられず、安定した病院運営のためには2026年度診療報酬改定で大幅な改善が望まれる。費用上昇に見合う改訂がなければ、病院運営の立て直しは難しく、地域住民へ適切な医療と安心を継続して届けることができなくなるだろう。

一方で、財政支援や診療報酬引き上げを求める医療者側も、経営改善への取り組みを怠ることはできない。この厳しい環境で病院が生き残るには、医療環境や制度の変化に柔軟に対応し、効率的な医療を実践する姿勢が求められる。医療機関には、困難をしなやかに乗り越え回復する力「レジリエンス」が必要なのではないかと考えている。

小野 剛(市立大森病院院長、全国国民健康保険診療施設協議会会長)[経営危機][緊急財政支援レジリエンス

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