私が医学生だった頃、某病院の小児科に見学に行ったことがありました。そのときに、とあるお子さんに会いました。ひどいネグレクトで体重が激減し、危機的状況だったのですが、無事、一般病棟に転院してきたということでした。今でも名前を思い出すことができますが、仮にAちゃんとします。
今では虐待への対応はかなり改善されていますが、当時は「児童虐待の防止等に関する法律」(児童虐待防止法)がなく、虐待はセンセーショナルに報道されるものの、子どもの基本的な人権が守られていませんでした。ネグレクトは主に母親によって行われていましたが、Aちゃんの親権はまだ両親にありました。
私はその話を聞いて憤慨しました。過去のカルテを読んで、Aちゃんがどのような状態で入院してきたかを知っていたからです。入院時の体重は年齢相当の半分ほどでした。もう一度書きます。私は憤慨しました。どうやって母親から親権を剝奪し、母親に刑事責任を負わせようか、そればかりを考えていました。しかし、病院のカンファレンスでスタッフの「Aちゃんにとって最善の方法は、家族と一緒に平和に過ごすこと」という発言を耳にし、衝撃を受け、自らの無知に恥じ入りました。