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【識者の眼】「インフルエンザワクチン、『接種したのに発症した』という経験にどう答えるか」児島悠史

登録日: 2025.12.05 最終更新日: 2025.12.11

児島悠史 (薬剤師/Fizz-DI代表)

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2025年は特に流行が早く始まったインフルエンザですが、その重要な対策となるのがワクチン接種です。インフルエンザワクチンに期待できる感染予防効果は、シーズンによって多少の変動はあるものの、およそ60%程度であることが確認されています。これは、各年代における平均的なインフルエンザの発症率が、小児では30.0%から11.0%1)に、成人では2.3%から0.9%2)に、高齢者では6.0%から2.4%程度3)に軽減する、という意味です。

しかし、ワクチンが発症を防いだとしても、ゲームのように「Block!!」などと表示されるわけではないため、個人としてはその効果を“実感”することはできません。また、ワクチンを接種しても発症を100%防げるものではないため、「ワクチンを接種したのに発症した」という予想外の事態が起こることもあります。

一方で、ワクチンには重症化・死亡リスクを50〜65%程度軽減する効果もあります4)。つまり、運悪く発症してしまったとしても、その後はダメージコントロールとしてしっかり機能し、生命の危機に陥るような事態(重症化)から守ってくれる、と言えます。また、子どもの場合には39℃を超える高熱が出るリスクも半減できるなど、インフルエンザそのものの症状を和らげる効果も期待できます5)

「ワクチンを接種したのに発症した」という経験から、「高いお金を払ったのに無駄だった」と失望感を抱いてしまう人は少なくありません。こうしたネガティブな印象になってしまうことは仕方のない面もありますが、これを放置していると、偽情報や詐欺につけこまれる絶好の“隙”になってしまいます。たとえワクチン接種後にインフルエンザを発症してしまったとしても、ワクチンを接種した判断は間違っていないこと、そのワクチンも決して無駄になったわけではないことをしっかりと説明し、理解してもらうことが大切です。

【文献】

1) Jefferson T, et al:Cochrane Database Syst Rev. 2018;2(2):CD004879.

2) Demicheli V, et al:Cochrane Database Syst Rev. 2018;2(2):CD001269.

3) Demicheli V, et al:Cochrane Database Syst Rev. 2018;2(2):CD004876.

4) Scott J, et al:N Engl J Med. 2025;10:1056.

5) Danier J, et al:Pediatr Infect Dis J. 2019;38(8):866-72.

児島悠史(薬剤師/Fizz-DI代表)[薬剤師][インフルエンザワクチン接種

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