「性同一性障害」は,DSM-5(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders, 5th Edition)において病名が「性別違和」へと変更された。「性別違和」とは,その人により「体験または表出されるジェンダー」と,「指定されたジェンダー」との間の不一致に伴う苦痛を意味する。「体験または表出されるジェンダー」とは,その人の人生の体験の中で実感し,あるいは表出してきたジェンダーである。「指定されたジェンダー」とは,通常出生時に行われる,婦人科医や助産師によって指定される性別のことである。
なおICD-11(International Classification of Diseases 11th Revision)においては,「性別不合」へと変更され,分類される章も「精神および行動の障害」から「性の健康に関連する状態群」に移動した。すなわち,ICD-11では,もはや精神疾患ではない。
▶診断のポイント
性別違和は年齢により異なる表れ方をする。出生時の性別が女性の場合,思春期前には,男の子になりたいという願望を表出したり,男の子であると主張したりする。男の子の服装や遊びを好む。出生時の性別が男性の場合,思春期前には,女の子になりたいという願望を表出したり,女の子であると主張したりする。女の子の服装や遊びを好む。
成人においては,第一次および第二次性徴から解放されたい,他のジェンダーの第一次および第二次性徴を得たい,と望む。体験されたジェンダーの行動,服装,特徴を取り入れる。指定されたジェンダーとして,周囲の人にみなされることや社会で生活することに不快感を覚え,体験されたジェンダーとしてみなされ,生活したいと望む。
