急性扁桃炎が先行して,口蓋扁桃被膜と咽頭収縮筋の間の疎性結合組織に炎症が及んだものを扁桃周囲炎と,膿瘍を形成したものを扁桃周囲膿瘍と呼ぶ。進展すると,深頸部膿瘍や降下性縦隔炎,喉頭浮腫による気道狭窄などの重篤な合併症に至ることがあるため,早期の適切な診断と治療が必要である。
▶診断のポイント
【症状】
左右差のある高度な咽頭痛,高熱,嚥下時痛,開口障害,含み声,口臭,流涎,頸部痛。喉頭浮腫に至ると呼吸困難感をきたす。
【所見】
扁桃周囲炎では口蓋扁桃周囲の発赤腫脹がみられ,扁桃周囲膿瘍ではさらにその所見が著明である。上極型の扁桃周囲膿瘍であれば触診で膿瘍の波動を触れることもあり,診断は比較的容易である。ただし,下極型の膿瘍では,口腔からの視診では一見正常な咽頭所見に見えることもある上,喉頭浮腫のリスクもより高い。したがって高度な咽頭痛を訴える場合には,必ず咽喉頭内視鏡にて気道狭窄の有無を含め確認することが肝要である。
また,膿瘍形成を疑った場合は,積極的に造影頸胸部CTを施行する。膿瘍の局在,単房性か多房性か,深頸部膿瘍や降下性縦隔炎の併発がないかを確認する。
