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【識者の眼】「なかなか難しい若手医師とのつき合い方」草場鉄周

登録日: 2025.12.05 最終更新日: 2025.12.05

草場鉄周 (日本プライマリ・ケア連合学会理事長、医療法人北海道家庭医療学センター理事長)

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平素は総合診療関連の社会情勢を論じることの多い本連載だが、本稿はまったく異なるテーマを1つ取り上げる。

私自身、医療法人や学会の理事長という立場もあり、医学生や臨床研修医、さらには総合診療専門医をめざす専攻医や若手の総合診療医・家庭医と話す機会が多い。多くは彼らのモチベーションや熱意に心打たれ、自分も応援できる環境をつくろうと思わせるものだが、時に戸惑うこともある。当初は医学部を選んだという環境ゆえだと理解していたが、そこにはいくつかのパターンがあり、適切に対応しないとネガティブな結果をもたらすこともあると感じている。

1つ目は、大変頭は切れるが、人と交わることに強い不安があるタイプ。症例のプレゼンや鑑別診断を確認するとピカイチだが、話しても目が合わない、自分から相談してくることもない、という印象である。一見自立しているように見えるため、指導医としては放置してしまいがちになる。ただ、あるきっかけで現状や自分自身に強い不満や不安を抱えていることがわかり、驚愕することも多い。突然の退職などもめずらしくなく、慌てて慰留し対話する際に心身ともに摩耗する。

こうした方には、ややお節介に感じても指導医側から積極的にアプローチすることが必要だ。昔のように居酒屋に誘う時代でもなく、場の設定は簡単ではないが、1〜2カ月に1回程度の懇談の場などを設けるとよいだろう。医療業務だけでなく、プライベートも語れるような雰囲気で。

2つ目は、自尊心が低く、日々の学習や業務に不安を感じ、頻繁にあれこれと相談してくるタイプ。多かれ少なかれ、働き始めは誰もがこうした雰囲気だが、数年を経ても客観的には良い仕事ができているにもかかわらず、このスタイルが変わらない場合は難しい。具体的な実践例を挙げて「できているよ」と伝えても、「いや、それはたまたまで」や「先生には私のできていないところが見えていない」と言われ、取りつく島がない。

こうした方の場合、そのスタイルの裏にどのようなニーズがあるのかを探索することが大事である。多様なケースがあるが、たとえば指導医に「相談すること」自体が大切で、答えを求めていないこともある。また、生い立ちで自尊心が傷つけられる体験が多く、自己回復するプロセスにある方もいる。つまり、指導医としては一歩引き、冷静に見つめることが重要で、前のめりで「頑張れ、頑張れ」と言わないほうがよいことが多い。「見守る」という言葉が適切だろう。

まだまだいろいろなタイプがいるが、対応側のエネルギーを消費しやすい2タイプを紹介した。40歳代、50歳代ともなると、若手医師とどうつき合うかが、チームとしての診療の質や自分自身の仕事のあり方に大きな影響を与える。世代を超えて気持ちよく働ける現場が、少しでも増えたらと思う。

草場鉄周(日本プライマリ・ケア連合学会理事長、医療法人北海道家庭医療学センター理事長)[総合診療/家庭医療

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