男性に多く,50歳以上が好発年齢である。初期は咽頭違和感程度であり,進行に伴い咽喉頭痛,嗄声,嚥下困難,頸部腫脹などが生じる。喫煙と飲酒が危険因子であり,食道癌,肺癌や他の頭頸部癌との重複が多い。下咽頭は食道へと続くため,上部消化管内視鏡検査時,偶発的に発見されることもある。
▶診断のポイント
内視鏡による咽頭観察が重要で,NBI(narrow band imaging)の併用が表在性病変の診断に有用である。確定診断は生検による病理組織検査で,大部分が扁平上皮癌である。
▶私の治療方針・処方の組み立て方
がんと診断したら,NBIを併用した内視鏡で病変の広がりをさらに詳しく確認する。下咽頭は梨状陥凹,輪状後部,後壁の3亜部位にわけられるが,通常の方法では梨状陥凹以外の観察は難しい。正確な診断にはmodified Killian法1)の併用が必須である。本法では,上半身を水平まで前屈した状態で,首を左右に捻転し,息こらえを行う。これにより下咽頭が大きく開き,正確な粘膜進展範囲を知ることができる。次にCT,MRI,超音波検査,PET-CTで,原発,頸部リンパ節転移,遠隔転移を評価し,TNM分類によるステージングを行う。前述のように,食道癌の重複が多いため,上部消化管内視鏡検査も必ず行う。
T1/T2では経口腔的手術や放射線単独療法が,T3/T4では化学放射線療法や拡大手術・皮弁による再建が主な選択肢となる。頸部リンパ節転移に対して頸部郭清術を行う。病理学的にリンパ節転移の節外浸潤を認めた場合,術後化学放射線療法を検討する。遠隔転移を認めた場合,薬物療法となる。免疫チェックポイント阻害薬であるペムブロリズマブを使用する場合,免疫組織化学染色でCPS(combined positive score)を確認する。
