腱は筋肉を骨につなぐ丈夫な組織で,紐状の構造物である。筋肉が収縮し,介在する腱が引っ張られることで骨・関節の運動が可能となる。手には主に,伸筋腱(前腕外側から手背を走行し,指・手関節を伸展させる腱)と,屈筋腱(前腕内側から手掌を走行し,指・手関節を屈曲させる腱)が存在している。腱が断裂して運動障害を生じた場合には,手指機能回復を目的とした,腱を修復するための手術が行われる。
▶診断のポイント
腱損傷の一般的な原因には切創・動物咬傷などの開放創があり,腱に対する直接的な外力がかかって発生するものがある。
一方,指先を突くような形で発生するもの(槌指)やスポーツ損傷など腱の牽引力で発生するもの,関節リウマチや変形性関節症など腱の滑走床の変形による腱の断裂など,開放創がなく生じるものがある。包丁などの刃物による開放創がある場合,疼痛による運動制限を考慮する必要はあるが,受傷後に自動運動不能となることで診断は可能である。
また,自動運動を行えない場合であっても,手指の安静時の肢位のバランスが崩れる(示指から小指に向けて順に屈曲位が強くなる)ことでも判断は可能である1)。屈筋腱損傷の場合には近傍を走行する指神経・動脈損傷を生じていることもあり,感覚障害や循環障害がないかの確認が必要となる。開放創がない場合で指の自動運動に制限が生じている場合,病歴に注意し,必要に応じて画像検査(超音波・MRI・CT等)で腱に物理的な損傷があるかどうかの確認を行う。腱実質の損傷がない状況では神経麻痺による運動障害を疑って治療を行う。
