膵管内乳頭粘液性腫瘍(intraductal papillary mucinous neoplasm:IPMN)は,膵管内で乳頭状増殖を呈する膵腫瘍であり,産生された粘液の膵管内貯留のために膵管拡張をきたすという特徴がある。主膵管に存在する腫瘍のために主膵管拡張を伴う主膵管型,分枝膵管の腫瘍のために分枝膵管の囊胞状拡張を伴う分枝型,両方の所見を有する混合型に分類される。主膵管拡張や壁在結節などが悪性を疑う所見であり,それらを認める場合には外科的切除を検討する。また,IPMN由来膵癌とIPMN併存膵癌の発生を考慮して経過観察する必要がある。
▶診断のポイント
粘液貯留に伴う主膵管あるいは分枝膵管の拡張があれば,IPMNを疑う。通常型の膵管癌と異なり,腫瘍自体による膵管閉塞は稀である。画像検査にて,分枝型あるいは混合型では,cyst by cystの構造・ブドウの房状の形態を呈し,主膵管との交通がみられ,頭部,体部,尾部のどの部位でも発生する。また,主乳頭からの粘液の排出や,主膵管内あるいは分枝膵管内の壁在結節の存在が決め手となる。
分枝型,混合型の場合には囊胞状の形態を呈するため,ほかの囊胞性腫瘍,特に粘液性囊胞腫瘍,漿液性囊胞腫瘍,膵仮性囊胞との鑑別診断が重要となる。粘液性囊胞腫瘍は,cyst in cystの構造・オレンジ状の形態を呈し,ほとんどが膵体尾部に認められ,主膵管との交通は稀である。漿液性囊胞腫瘍は,多房性であるが,スポンジ状・蜂巣状の形態を呈し,主膵管との交通はない。膵仮性囊胞は,単房性で慢性膵炎に伴うことが多い。これらを考慮し,IPMNとの鑑別診断を行う。
