末梢動脈疾患(peripheral arterial disease:PAD)は,腹部大動脈〜下肢動脈が動脈硬化により狭窄・閉塞し,症状をきたす疾患である(閉塞性動脈硬化症とほぼ同義である)。重症例では下肢切断および生命の危険に陥るが,下肢症状は必ずしも段階的に進行するわけではない。慢性閉塞を認めても長期にわたり無症状で生活することや,低活動性患者では無症状であった下肢に壊疽を生じることもある。一方,下肢症状が軽度であっても心疾患や脳卒中の併存率および発症率は健常者より高く,全身の動脈硬化への注意も必要である。
▶診断のポイント
無症候性・間欠性跛行を呈する軽症例と,安静時痛・潰瘍・壊疽を有する重症例,包括的高度慢性下肢虚血(chronic limb-threatening ischemia:CLTI)例とでは緊急度や予後がまったく異なる。
【間欠性跛行患者の診断】
下肢の大切断に至る危険性は低く緊急性はない。跛行の原因の約7割を神経性,2割を血管性,1割を両者の合併が占め,鑑別が必要である。下肢動脈拍動が減弱し,再現性が高く,体位や姿勢の影響を受けない症状を訴える場合は血管性を疑う。
足関節上腕血圧比(ABI)0.9以下は閉塞性動脈硬化症の診断として最も用いられる指標であるが,これより高くても血管性を否定することはできない。ABIまたは近赤外線分光法を用いた歩行負荷試験を行い,診断を確定することが望ましい。
ついで画像検査により動脈病変の評価を行う。初回診断時には腹部・骨盤内の評価と動脈閉塞の鑑別に適した造影CT検査を行いたい。
