▶治療の実際
一手目 血尿や蛋白尿,急な腎機能障害を認めた場合は専門医へ紹介
二手目 尿蛋白陽性の場合:オルメテックⓇ10mg・20mg OD錠(オルメサルタン メドキソミル)1回1錠1日1回(朝食後),尿蛋白陰性の場合:ARB/ACE阻害薬,またはノルバスクⓇ5mg・10mg錠(アムロジピンベシル酸塩)1回1錠1日1回(朝食後),またはフルイトランⓇ1mg・2mg錠(トリクロルメチアジド)1回1錠1日1〜2回(朝食後または朝・夕食後)
腎機能障害の進行が速い場合や75歳以上のCKD stage G4・G5の場合は,CCBの使用を検討。
▶専門家へのコンサルト
尿検査を行い糸球体型の血尿,蛋白尿を認める場合には腎生検が可能か専門家と相談する。検尿異常がない場合でもCKD stage G3b以上の腎機能障害を認めるときには,専門家へのコンサルトを検討する(40歳未満ではCKD stage G3aから紹介)。
Ⅱ.腎血管性高血圧症
腎動脈の狭窄または閉塞に伴う高血圧で,腎機能障害自体の原因にもなりうる疾患である。
▶診断のポイント
若年発症の高血圧,治療抵抗性,低カリウム血症,RA系阻害薬使用後の腎機能障害増悪,腎臓サイズの左右差,夜間多尿,腹部血管雑音,肺水腫・脳血管障害の合併などの存在が手がかりとなる2)。上記を認めたら画像検査を検討するが,施行することが難しい場合には,この時点で専門医への紹介を考慮する。
可能であれば,まずは侵襲度の低い腹部超音波検査から行い,腎動脈の収縮期最高血流速度(peak systolic velocity:PSV)および腎動脈起始部PSV/腹部大動脈PSV比(renal aortic ratio:RAR)などを測定する。一例として腎動脈PSV>180cm/秒,RAR>3.5,腎内動脈の特徴的な波形などで有意狭窄と判断する。腹部超音波検査が腸管ガスや体格の問題で難しい場合には,MRAやCTAを用いて狭窄の有無を判定する。
▶私の治療方針・処方の組み立て方
降圧薬を中心とした薬物療法,経皮的腎動脈形成術(PTRA)または外科的バイパス術がある。若年者の場合は線維筋性異形成が多く,PTRAが第一選択となる。一方で,中高年者に多い粥状動脈硬化症の場合,PTRAの薬物療法に対しての優位性は依然として議論の余地があり,個々の病態や疾患に応じて適応を判断する。粥状動脈硬化症への薬物治療は降圧薬,スタチン,アスピリンなどの組み合わせが基本となる。RA系阻害薬は,狭窄が片側の場合には腎予後や脳心血管病の発症リスクを抑えることが報告されており,検討してもよいが,急激な降圧や腎機能増悪に留意して少量から開始する。診断確定まではCCB使用は選択肢となる。禁煙および糖尿病の管理も重要である。
▶治療の実際
【診断確定前】
一手目 疑った場合は専門医に紹介。腎機能障害の懸念がある場合:ノルバスクⓇ5mg錠(アムロジピンベシル酸塩)1回1錠1日1回(朝食後),少量からRA系阻害薬を使用する場合:ニューロタンⓇ25mg・50mg錠(ロサルタンカリウム)1回1錠1日1回(朝食後),脂質異常症を合併している場合:クレストールⓇ2.5mg・5mg錠(ロスバスタチンカルシウム)1回1錠1日1回(朝食後)
二手目 〈効果不十分の場合,処方変更〉アダラートⓇ 20mg・40mg CR錠(ニフェジピン)1回1錠1日1回(朝食後),腎機能障害増悪を認めない場合:オルメテックⓇ20mg・40mg OD錠(オルメサルタン メドキソミル)1回1錠1日1回(朝食後),ロスーゼットⓇHD配合錠(エゼチミブ・ロスバスタチンカルシウム)1回1錠1日1回(朝食後)併用
【診断確定後】
適応があればPTRAと,降圧薬の調整。PTRA困難例では降圧薬を継続する。
▶専門家へのコンサルト
治療抵抗性高血圧などで腎血管性高血圧症の疑いがある場合や,超音波検査,CT・MRI検査で腎動脈の有意狭窄を有する場合は,専門家にコンサルトする。
Ⅲ.原発性アルドステロン症
▶診断のポイント
アルドステロンの自律分泌と血漿レニン活性(plasma renin activity:PRA)低値が特徴。低カリウム血症は認めないこともある。疑った場合,血漿アルドステロン濃度(plasma aldosterone concentration:PAC)(pg/mL)/PRA(ng/mL/時)比(aldosterone renin ratio:ARR)>200かつPAC>60pg/mLでスクリーニングをする2)。2021年のガイドラインでは,ARR 100〜200を境界域と位置づけ,暫定的に陽性として低カリウム血症や年齢,副腎腫瘤の有無を総合的に判断して機能検査を行うか判断するとしている。
スクリーニング検査が困難な場合には,二次性高血圧症疑いで専門医に紹介を検討する。確定診断には,カプトプリル負荷試験や生理食塩水負荷試験などを用いる。治療法は片側病変か両側病変かのタイプにより異なり,CT検査や副腎静脈サンプリングを行い確認する。片側病変の場合には腹腔鏡下副腎摘出術を考慮する。両側病変では基本的にミネラルコルチコイド受容体(MR)拮抗薬を使用した薬物治療となる。
▶私の治療方針・処方の組み立て方
スクリーニング検査や確定診断の前にMR拮抗薬やARB,ACE阻害薬を使用すると,PACやPRAの検査値に誤差が生じる可能性があるため,状況が許せば確定診断まではCCBやα遮断薬で降圧を行う。低カリウム血症が顕在化し周期性四肢麻痺を呈することもあり,補充を要する重症例の場合は早急に専門医へ紹介する必要がある。
確定診断後は,手術を行わず薬物治療を継続する場合には,原則としてMR拮抗薬継続は必要である。MR拮抗薬のみで血圧コントロールに難渋する場合には,その他の降圧薬を併用する。スピロノラクトンは,その他のMR拮抗薬に比較してMRへの選択性が低く,性ホルモン関連副作用が出やすいと報告されている。男性では女性化乳房,女性では乳房痛を認めることもあり,男性や閉経前の女性ではエプレレノンやエサキセレノンを主に使用する。
▶治療の実際
【診断確定前】
一手目 ノルバスクⓇ5mg・10mg錠(アムロジピンベシル酸塩)1回1錠1日1回(朝食後),またはアダラートⓇ 20mg・40mg CR錠(ニフェジピン)1回1錠1日1〜2回(朝食後または朝・夕食後)
二手目 〈効果不十分の場合,一手目に追加〉カルデナリンⓇ1mg・2mg錠(ドキサゾシンメシル酸塩)1回1錠1日1〜2回(朝食後または朝・夕食後)1mg/日から開始し,2mg/日,4mg/日などと副作用がないか注意して徐々に増量
三手目 〈低カリウム血症を合併する場合,一手目または二手目に追加〉アスパラカリウム300mg錠(L-アスパラギン酸カリウム)1回2錠1日3回(毎食後),重症の場合やアルカローシスが強い場合:塩化カリウム600mg徐放錠「St」(塩化カリウム)1回2錠1日2回(朝・夕食後)
【診断確定後,薬物治療継続の場合】
一手目 ミネブロⓇ2.5mg・5mg錠(エサキセレノン)1回1錠1日1回(朝食後),またはセララⓇ50mg・100mg錠(エプレレノン)1回1錠1日1回(朝食後)
二手目 〈一手目が難しい場合や閉経後の女性の場合〉アルダクトンⓇA25mg錠(スピロノラクトン)1回1〜2錠1日1〜2回(朝食後または朝・夕食後)も考慮
三手目 〈一手目または二手目に追加〉ノルバスクⓇ5mg・10mg錠(アムロジピンベシル酸塩)1回1錠1日1回(朝食後),またはアダラートⓇ20mg・40mg CR錠(ニフェジピン)1回1錠1日1〜2回(朝食後または朝・夕食後)
▶専門家へのコンサルト
スクリーニング検査でARR>200(もしくはARR 100〜200)かつPAC>60pg/mLの場合(スクリーニング検査が困難な場合は検査前に紹介も検討),腎排泄性の低カリウム血症を呈する場合,降圧薬を数剤追加しても治療抵抗性高血圧の場合,専門家にコンサルトする。
Ⅳ.褐色細胞腫・パラガングリオーマ
副腎髄質由来の褐色細胞腫と傍神経節由来のパラガングリオーマがある。カテコラミン過剰分泌に伴い,二次性高血圧症を呈する。副腎外,両側性,多発性が約10%を占め,遺伝子異常を認める例は約40%程度あることが明らかになってきた2)。
▶診断のポイント
カテコラミン過剰分泌に伴う発作性高血圧や,動悸,発汗,頭痛,顔面や上下肢の蒼白などの自覚症状から存在を疑う。特徴的な自覚症状がある場合は専門医への紹介を検討する。
画像検査で偶発的に副腎腫瘤が認められ,診断に至るケースも増えている。スクリーニング検査として,随時尿メタネフリン・ノルメタネフリン排泄量高値(>500ng/mgCr)が有用であり,高値例では24時間蓄尿検査でメタネフリン・ノルメタネフリン排泄量の増加(正常上限の3倍以上)を確認する。スクリーニングでは血漿メタネフリン・ノルメタネフリン濃度の確認も可能となった。また,CT・MRI検査で副腎腫瘤の存在を確認する。局在が不明な場合や転移巣の検索には123I-MIBGシンチグラフィー,18F-FDG PET検査などで検索する。
▶私の治療方針・処方の組み立て方
腫瘍摘出術が原則である。基本的には,血圧管理と循環血漿量および術前のクリーゼ防止のためα遮断薬を漸増し十分量を投与する。コントロール不良の場合にはCCBの併用も可能である。頻脈も合併した場合はβ遮断薬も併用するが,単独での使用はα作用を増強させるため禁忌であることに留意する。また,造影剤使用も血圧上昇や頻脈の増悪を引き起こす可能性があるため,疑いが強い場合には単純CTやその他の画像検査を考慮する。
▶治療の実際
【クリーゼを呈する場合】
一手目 専門医へ早急に紹介
二手目 レギチーンⓇ注(フェントラミンメシル酸塩)2〜5mg(静注),その後5%ブドウ糖液等で溶解し2mg/時で持続点滴静注,血圧を確認し増減
頻脈や不整脈合併例は,オノアクトⓇ注(ランジオロール塩酸塩)の追加を考慮。
【診断確定前】
一手目 専門医に紹介
二手目 カルデナリンⓇ1mg・2mg錠(ドキサゾシンメシル酸塩)1回1錠1日1〜2回(朝食後または朝・夕食後)1mg/日から開始し,2mg/日,4mg/日などと副作用がないか注意して徐々に増量
【診断確定後,手術までの降圧管理】
一手目 カルデナリンⓇ2mg・4mg錠(ドキサゾシンメシル酸塩)1回1錠1日2回(朝・夕食後),降圧不十分な場合は1日4回(保険上は16mg/日まで増量可)
二手目 〈頻脈があれば,慎重に一手目に追加〉アーチストⓇ10mg錠(カルベジロール)1回0.5〜1錠1日1〜2回(朝食後または朝・夕食後)
▶専門家へのコンサルト
疑い症例の場合(クリーゼが疑われる場合は緊急でコンサルトする),カテコラミン過剰分泌状態が疑われる場合,褐色細胞腫を疑う副腎腫瘤を認めた場合,専門家にコンサルトする。
Ⅴ.クッシング症候群
コルチゾール(F)の自律性かつ過剰分泌により高血圧を呈する。副腎腺腫や副腎過形成に伴う副腎性クッシング症候群は副腎皮質刺激ホルモン(adrenocorticotropic hormone:ACTH)非依存性で,下垂体ACTH産生腫瘍によるクッシング病および異所性ACTH産生腫瘍はACTH依存性である。
▶診断のポイント
自覚症状として中心性肥満,満月様顔貌,野牛様脂肪沈着,赤色皮膚線条,皮膚の皮薄化,多毛,痤瘡などの症状を認めたら疑うきっかけとなる。高血圧以外には糖尿病,脂質異常症,尿路結石などや,ステロイドを内服していない若年の骨粗鬆症を認めることもある。血液検査では好酸球・リンパ球減少,好中球増加,低カリウム血症を呈することがある2)。上記症状からクッシング症候群を疑う場合には,専門医への紹介を検討する。血清ACTH,血清F,尿中遊離F測定を施行してF高値を確認し,デキサメタゾン1mg抑制試験を行いFの抑制欠如(≧5μg/dL)で診断する。ACTHの抑制の有無からACTH依存性,非依存性を確認し,副腎CT,下垂体MRI検査などを用いてさらに診断を進めていく。
▶私の治療方針・処方の組み立て方
臨床的には,原発性アルドステロン症など他の二次性高血圧症を呈する疾患と鑑別を要する場合があるため,診断確定まではCCBやα遮断薬による降圧を検討する。診断確定後は,一側性副腎腺腫や副腎癌の場合には,腹腔鏡下副腎摘出術が第一選択である。外科的処置が困難な場合には,F合成阻害作用のあるメチラポン,ミトタン,オシロドロスタットを選択する。下垂体性クッシング病の場合には,ソマトスタチンアナログであるパシレオチドも使用されることがある。
▶治療の実際
一手目 専門医に紹介
二手目 高血圧に対してノルバスクⓇ5mg・10mg錠(アムロジピンベシル酸塩)1回1錠1日1回(朝食後),またはアダラートⓇ20mg・40mg CR錠(ニフェジピン)1回1錠1日1回(朝食後)
三手目 〈効果不十分の場合,二手目に追加〉カルデナリンⓇ1mg・2mg錠(ドキサゾシンメシル酸塩)1回1錠1日1〜2回(朝食後または朝・夕食後)1mg/日から開始し,2mg/日,4mg/日などと副作用がないか注意して徐々に増量
▶専門家へのコンサルト
クッシング症候群を疑う場合,血液検査でF高値を認める場合,副腎腫瘤を認める場合,専門家にコンサルトする。
【文献】
1)Rimoldi SF, et al:Eur Heart J. 2014;35(19):1245-54.
2)日本高血圧学会高血圧治療ガイドライン作成委員会, 編:高血圧治療ガイドライン2019.ライフサイエンス出版, 2019.
3)日本腎臓学会, 編:エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2023. 東京医学社, 2023.
野口雄司(東北大学大学院医学系研究科腎臓内科学分野)
豊原敬文(東北大学大学院医学系研究科腎臓内科学分野准教授)
田中哲洋(東北大学大学院医学系研究科腎臓内科学分野教授)