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小児肘内障[私の治療]

登録日: 2025.09.01 最終更新日: 2026.02.21

皆川洋至 (城東整形外科副院長)

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輪状靱帯(回外筋の起始部)が腕橈関節内に嵌頓し,痛みと運動制限をきたす小児肘関節疾患である。稀に関節弛緩のある成人にも発生する。
「ナイショウ」の話:もともと関節内で何か障害が生じている意味で「内障」という言葉が使われた。MRIが半月板断裂など関節内病変を描出するようになったことで「膝内障」という診断名が廃語になった。「肘内障」とは,X線検査しか頼れる画像診断装置がなかった時代の診断名であり,また,X線検査だけで試験整復するという危険行為が繰り返されてきた元凶でもある。超音波検査が肘内障の病態を明らかにした現在,「肘内障」は廃語にすべき診断名である。輪状靱帯脱臼(annular ligament displacement)と呼ぶのが正しい。不適切な傷病名によって,患者が不利益をこうむるようなことがあってはならない。

▶診断のポイント

【問診】

子どもが突然,痛がって腕を動かさなくなり受診してきた場合,骨折と肘内障を念頭に置く。肘内障が好発する2歳前後ではうまく話せないため,保護者(大半は母親)から発症時の状況を聞き出す。半分は上肢の牽引,残り半分は牽引以外で発症する。牽引以外では,転倒など外傷がある場合,寝返りやハイハイなど外傷がない場合,そして誰も見ておらず不明な場合がある。痛い場所を指差す子どもでは,肘でなく手首を指す場合がある。問診からの情報が少ないため,肘内障診断では臨床所見と画像所見が重要になる。

【身体所見】

前腕回内位で腕を“だらん”と下げ,痛がって患肢を動かそうとしないのが特徴である。患肢に腫脹・変形があれば骨折を疑う。

【超音波検査】

まず超音波検査(US first)が鉄則になる。患肢を手台に置き,肘伸転位,肘前方操作で腕橈関節の長軸像を観察する。

〈関節水腫・血腫〉

肘内障では水腫で関節内が低エコー像を示す。関節内高エコー像は骨折による血腫,すなわち「肘内障ではない」ことを示す所見である。

〈Jサイン〉

輪状靱帯と一緒に回外筋も腕橈関節内に引き込まれる。Jサインは,引き込まれた回外筋の形に由来し,「肘内障である」ことを示す所見である。

〈回外筋高エコー像〉

回外筋が牽引され肉離れが生じると高エコー像を示す。整復されても所見が残るため,「肘内障だった」ことを示す所見である。

【X線検査】

あくまで追加検査(X-ray second)である。腫脹・変形を認めた場合や関節血腫を認めた場合などに行う。被曝や医療費を無視した乱用は推奨できない。

【MRI】

超音波検査で関節血腫を認め,X線検査で異常を認めない場合に行う。T2脂肪抑制画像で上腕骨遠位端,橈骨頸部,肘頭に高信号像(骨挫傷)を確認できる場合が多い。撮像中に患児が動くとよい画像が得られないため,必須の検査ではない。


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