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幼虫移行症[私の治療]

登録日: 2025.08.07 最終更新日: 2026.02.21

丸山治彦 (宮崎大学医学部感染症学講座寄生虫学分野教授)

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幼虫移行症とは,人体内で成虫になれない寄生虫(多くは線虫)による感染症を言う。トキソカラ(イヌ回虫またはネコ回虫),ブタ回虫,顎口虫,クラシカウダ(旋尾線虫タイプX),広東住血線虫,動物由来の鉤虫類などが知られている。旋毛虫症は幼虫移行症とはされないが,治療法が共通するので本稿に含める。マンソン孤虫症,エキノコックス症,有鉤囊虫症も寄生虫の幼虫による疾患だが,本稿では扱わない。経皮感染する動物由来の鉤虫類を除いて食品由来寄生虫症であり,生あるいは加熱不十分な魚介類や肉類を摂取して感染する。皮膚,肺,肝臓,中枢神経が標的となることが多い。

▶診断のポイント

幼虫移行症が疑われるのは,主に①皮膚爬行疹,②末梢血好酸球増多を伴う肺または肝臓の異常陰影,③脊髄炎,④片側性のぶどう膜炎,⑤その他好酸球性の炎症を伴う病変である。虫体の直接証明が可能なのは皮膚幼虫移行症で,他の病型では抗体検査によって診断する。前述のような症状・症候に遭遇したときに,幼虫移行症という疾患を疑うかどうかが最も重要な診断のポイントである。

▶私の治療方針・処方の組み立て方

皮膚爬行疹があり虫体の摘除が見込めるときには確定診断を兼ねて皮膚生検を実施する。通常は単数寄生なので生検組織に虫体が含まれていれば再発しないが,念のため抗寄生虫薬を投与する。

虫体の摘除ができなかったとき,および皮膚爬行疹以外の病型では抗寄生虫薬を使用する。ただし,抗寄生虫薬の種類は少なく,基本的に線虫類に対する第一選択薬はアルベンダゾールで,アルベンダゾールに反応しないときや肝機能障害などで使えないときにはイベルメクチンとなる。どちらも保険適用外である。

アルベンダゾールの用量は確立されていないが,病変が肺,肝臓,脊髄,眼である場合は比較的長期間(4週以上)投与し,皮膚の場合は短期間(5日程度)投与する。前者はトキソカラまたはブタ回虫,後者は顎口虫,クラシカウダ(旋尾線虫タイプX),動物由来の鉤虫類である。広東住血線虫症は抗寄生虫薬を用いなくても虫体が死滅するので対症療法でよい。ただし,短期間のアルベンダゾールで症状が早く軽快したという報告がある。旋毛虫症は皮膚幼虫移行症に準じる。


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