▶私の治療方針・処方の組み立て方
機能性月経困難症の第一選択は,非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)による対症療法であるが,十分な疼痛緩和が得られない場合にはホルモン療法を行う。器質性月経困難症では原疾患の治療が優先される。子宮筋腫や子宮内膜症,子宮奇形などの別稿を参照されたい。
機能性月経困難症と診断するには,丁寧な問診と産婦人科内診,超音波検査に加えて,血液検査(CRPなど),細菌培養,クラミジア抗原検査,画像診断などにより,器質性疾患を除外する必要がある。
ホルモン療法は,低エストロゲン・プロゲスチン配合薬(low dose estrogen progestin combination:LEP)あるいはプロゲスチン製剤(ジエノゲスト)を用いる。LEP製剤はわが国において数種類が保険承認されており,投与法や配合されているプロゲスチンの種類がそれぞれ異なる。周期的投与よりも連続投与のほうが疼痛日数を減少させることが示されており,疼痛を主症状とする場合には連続投与での処方を行っている。血栓症のリスクがあることから40歳以上の患者,喫煙者,肥満の患者に対しては慎重に投与する。ジエノゲスト(0.5mg錠)はプロゲスチン単剤療法であることが特徴で,疼痛制御に優れる。LEP製剤との違いは,エストロゲンが含有されていないことである。内因性のエストロゲン分泌が抑制されない一方,不正性器出血などの副作用に注意する。LNG-IUS(レボノルゲストレル放出子宮内システム)は過多月経にも適応がある。装着後5年を超えないうちに抜去または交換する。
▶治療の実際
一手目 ロキソニンⓇ60mg錠(ロキソプロフェンナトリウム水和物)1回1錠(疼痛時頓用)
対症療法として,NSAIDsを投与する。
二手目 〈処方変更〉LEP製剤(症例に合わせ①~④より選択)
以下の薬剤を用いる場合には,月経第1日目から服用を開始する。毎日一定の時刻に服用するよう指導する。
①ヤーズフレックスⓇ配合錠(ドロスピレノン・エチニルエストラジオールベータデクス)1回1錠1日1回,連続投与(25日目以降に3日間連続で出血が認められた場合,または連続投与が120日に達した場合は,4日間休薬)
②ジェミーナⓇ配合錠(レボノルゲストレル・エチニルエストラジオール)1回1錠1日1回,周期的投与(21日間内服,7日間休薬)あるいは連続投与(77日間連続内服し,その後7日間休薬)
③ルナベルⓇ配合錠LDまたはルナベルⓇ配合錠ULD(ノルエチステロン・エチニルエストラジオール)1回1錠1日1回,周期的投与(21日間内服,7日間休薬)
④ヤーズⓇ配合錠またはドロエチⓇ配合錠(ドロスピレノン・エチニルエストラジオール)1回1錠1日1回,周期的投与〔28日間内服(24日間実薬,4日間プラセボ)〕
三手目 〈処方変更〉プロゲスチン製剤:ディナゲストⓇ0.5mg錠(ジエノゲスト)1回1錠1日2回,月経周期2~5日目から服用開始
四手目 〈処方変更〉LNG-IUS:ミレーナⓇ52mg(レボノルゲストレル)1回1個(子宮内に挿入)
▶患者への説明のポイント
ホルモン療法の副作用には,不正性器出血,気分変動,むくみ,頭痛,悪心,皮膚症状などが挙げられる。LEP製剤処方時の血栓症のリスクは加齢とともに上昇する。患者の年齢や症状,病変,挙児希望の有無などを考慮し,薬剤選択を図っていく。
森 泰輔(京都府立医科大学産婦人科学教室教授)