1. 口腔内環境
(1)口腔衛生状態不良
歯周病によって,誤嚥性肺炎,感染性心内膜炎,各種血管障害,糖尿病・メタボリックシンドローム,慢性腎疾患などが増悪する傾向が示されています。また,義歯や舌苔などの清掃不良によって,口内炎や口腔カンジダ症などの増悪も起こりやすいです。
舌・口腔・義歯などの十分な清掃とともに,歯周病治療時の排膿散及湯,口内炎時の半夏瀉心湯・黄連湯・平胃散などの投与は,創傷治癒や感染対策も含めて有効です。
(2)口腔乾燥症と粘膜免疫の低下
唾液分泌低下は口腔粘膜免疫システムの破綻,常在細菌叢の変化,細菌,ウイルス,真菌などの感染を起こしやすくします。
まず,投与薬剤による口腔乾燥の確認は重要です。また高齢者の陰虚による口渇も考慮し,水分摂取の管理,唾液腺マッサージ指導,口腔保湿剤の使用とともに,五苓散,白虎加人参湯,麦門冬湯,滋陰降火湯,八味地黄丸などの漢方療法も行われます。
2. 口腔運動機能
(1)舌口唇運動機能低下・低舌圧・嚥下障害
口唇・舌の働きは構音・摂食・嚥下に関わります。口唇の運動低下は口腔の陰圧形成の低下をまねきやすいです。また舌運動や舌圧の低下は,発音ならびに口腔期から咽頭期にかけての摂食・嚥下運動に関係します。
嚥下機能は口腔・咽頭の運動の総合的機能であり,嚥下反射と咳反射で支えられています。半夏厚朴湯はサブスタンスPを増加させ,反射を調節することが知られています。
また口唇,舌,口蓋の各筋肉群の筋力低下が起こると,各反射が起こっても十分な摂食・嚥下運動ができません。さらに舌圧は握力と相関しており,舌・口腔・咽頭の運動機能を維持することはフレイル対策上も必要です。
そのため筋力の回復・筋のトーヌス低下の是正には,舌・口腔の各種運動療法とともに,補中益気湯,十全大補湯など補剤系漢方を用いて栄養状態の改善,筋力の回復が必要です。
【参考文献】
▶ 山口孝二郎:日歯東洋医会誌. 2022;41(1-2):17-23.
【回答者】
山口孝二郎 昭和大学医学部生理学講座生体制御学部門 客員教授