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深部静脈血栓症[私の治療]

登録日: 2025.03.26 最終更新日: 2025.11.26

星野祐二 (福岡山王病院血管外科部長,福岡国際医療福祉大学教授)

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▶治療の実際

【DOACの処方例】

治療の基本となるDOACの代表的な処方例について下記に記載する。いずれの処方においても腎機能や併用薬に応じて添付文書を参照の上,減量なども考慮する。

一手目 イグザレルト15mg錠(リバーロキサバン)1回1錠1日2回(朝・夕食後)初期3週間継続し,その後は15mg錠1回1錠1日1回(食後)に変更

一手目 エリキュース5mg錠(アピキサバン)1回2錠1日2回(朝・夕食後)初期7日間継続し,その後は5mg錠1回1錠1日2回(朝・夕食後)に変更

一手目 リクシアナ錠(エドキサバントシル酸塩水和物)60kg以下:30mg錠1回1錠1日1回(食後),60kg超:60mg錠1回1錠1日1回(食後)

【末梢型で軽症の場合】

血栓の中枢伸展がなく,浮遊血栓の所見もなければ,DOAC内服なし,弾性ストッキング着用のみで経過をみる場合もある。もし中枢伸展や浮遊血栓などが疑われる場合には,とりあえずDOAC処方を行い,数日後に超音波検査にて血栓の変化を再評価する。

【中枢型で軽症~中等度症状の場合】

DOAC処方を行う。もし浮遊血栓を認める場合には下大静脈フィルター留置も考慮する。外来/入院の選択は臨床症状により判断する。

【中枢型で重症の場合】

DOAC処方を行う。一般的に下肢の症状が高度であっても,入院下に下肢の安静・挙上を行えば症状は和らぐため,入院での管理が望ましい。血栓の範囲が広く,下肢の安静・挙上でも強い疼痛が持続し下肢にチアノーゼ様の色調変化を認める場合(有痛性青股腫)は,カテーテル血栓除去術などの侵襲的治療の必要性を考える。

▶患者への説明のポイント

【DVT発症後の外来フォロー時】

DOACの継続期間については,各施設,症例により様々であるが,ポイントになるのは血栓の発症要因である。長時間のフライトや車中泊,ピル内服など,要因が明確な場合は,その点を注意すればDOACの長期間投与までは不要となる。発症原因が不明な場合や,プロテインC欠乏症,プロテインS欠乏症などの血栓性素因がある場合には,再発予防として長期間投与となる場合もある。

DVT発症後の慢性期に起こる後遺症として血栓後症候群(postthrombotic syndrome:PTS)という病態がある。これは,溶けきらなかった血栓が慢性的に瘢痕化・器質化し,それらによる静脈血管の狭窄・閉塞や静脈弁不全が,下肢の静脈うっ滞症状を引き起こす病態である。DVT後数年経過すると,徐々にくるぶし付近に色素沈着や皮膚病変が出てくるため,外来定期フォローの際には患肢の下腿部分に皮膚病変がないかをチェックする必要がある。

【参考資料】

▶ 日本循環器学会, 他:肺血栓塞栓症および深部静脈血栓症の診断, 治療, 予防に関するガイドライン(2017年改訂版).
https://www.j-circ.or.jp/cms/wp-content/uploads/2017/09/JCS2017_ito_h.pdf

星野祐二(福岡山王病院血管外科部長,福岡国際医療福祉大学教授)


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