▶私の治療方針・処方の組み立て方・治療の実際
不登校は子どもが対処不能な状況から緊急避難した対処行動である。登校刺激を止めると一時的に安定するが,背景要因へ対応しないと改善しない。また,病気のように「治す」=「再登校」させるのではなく,子どもが安心して活動できるようになることが目標で,その場は学校に限らない。①~④の中で介入を急ぐもの,対応できそうなものを判別しながら,身体症状を介して医師としての対応を続ける。なお,「体調が悪いから登校できない」と考えている親子の理解を得るため,初期には「身体症状」の治療を優先し,経過中に登校への葛藤が明らかになれば「心身相関」を説明して「不登校」への対応を提案する。
つながる:身体症状に対応することは,子どもにとって自分の症状を認めてもらえたという信頼につながる。一方で,身体症状に過度に注目し「症状消失」=「登校」を求められる場合,逆に症状へ固執する。対症療法を行いながら「症状があってもできること」を提案する。2~4週間ごとの定期診察を提案し,規則正しい生活や睡眠,食事,興味のある活動や手伝いの経験などを聴取し,受診が1つの社会経験となるようにする。保護者へは,見通しとして,家庭で安定したら居場所を探す方針を伝える。
つなぐ:②③は専門外来へ,④は学校や児童相談所など地域の公的機関とつなぐ。他者とつながりにくいことが特徴なので,親子に情報提供した後も,困ったら相談にのることを保証する。不登校児の8割は成長して社会参加するが,一部成人後のひきこもりが発生する。卒業後に孤立しないよう,かかりつけ医として長期的に親子がつながる場・機関を探すことに付き合う。
薬物療法は多岐にわたる。機能性疾患の治療は他稿を参照されたい。抗不安薬の使用は依存の発生に注意が必要だが,本人が挑戦する意欲がある場合,クロチアゼパムなどを少量頓用することもある。タンドスピロンは,依存性がなく自律神経調節作用がある。小児の適応に注意を要することを説明した上で試みる場合もある。睡眠に問題がある場合,神経発達症の併存があればメラトニンも有益である。抗精神病薬,抗うつ薬の使用を考慮する場合は専門医へ紹介する。エビデンスは不明な点があるが,眠りにくい(甘麦大棗湯),イライラする(抑肝散),食欲不振で虚弱体質(小建中湯,補中益気湯),胸脇苦満がありイライラする(柴胡加竜骨牡蛎湯)など,心身を整えるために漢方薬を用いることもある。
▶専門家へのコンサルト
以下の場合は,小児心療内科医あるいは児童精神科医へコンサルトする。
- 初診から3~6カ月以上経過しても家庭内で安定しない
- 神経発達症や精神疾患が疑われる
- 家族と会話をしない,昼夜逆転している,入浴や着替えなどの整容が保てない,暴力・暴言があるなど
▶患者への説明のポイント
【子どもに対して】
症状のつらさを認める一方で,生命に関わるような身体の病気はないことを保証する。また,つらい体験の「その後どうなったか・どうしたか」に注目して質問を行い,本人なりの対処(切り替えてゲームをした,ペットと遊んだ,など)を引き出す。
【家族に対して】
症状は仮病ではないこと,「学校に行きたくない・行くのが怖い」という気持ちが影響して症状が出現する(心身相関)仕組みを説明する。
子どもが次の行動を起こそうとするまで見守るよう依頼する。見守りは「何もしない」ことではなく,子どもの興味のあるものに家族が興味を示し,挨拶や雑談を通して交流を図り,時機が来て登校や進路選択の決断が必要となったときに,家族は味方だと認識され相談されるようになるための作業であることを伝える。
【文献】
1)日本小児心身医学会, 編:小児科医のための不登校診療ガイドライン. 小児心身医学会ガイドライン集―日常診療に活かす5つのガイドライン. 改訂第2版. 南江堂, 2015, p87-116.
2)Anne Li, et al:Psychosom Med. 2021;83(7):715-23.
岡田あゆみ(岡山大学学術研究院医歯薬学域准教授)