▶治療の実際
歯性感染症の臨床分類による抗菌薬の選択を以下に示す。
一手目 第一選択経口薬より処方
二手目 〈処方変更〉第二選択経口薬より処方
三手目 〈処方変更〉注射用抗菌薬より処方
【第一選択経口薬】
〈軽症〜中等症:1群(歯周組織炎)・2群(歯冠周囲炎)〉
サワシリンⓇ250mgカプセル(アモキシシリン水和物)1回1カプセル1日3〜4回(朝・昼・夕食後または6時間ごと)〔小児:1回10〜15mg/kg 1日3回(朝・昼・夕食後)〕
ペニシリンアレルギーの場合,以下のいずれかを処方する。
ダラシンⓇ150mgカプセル(クリンダマイシン塩酸塩)1回1カプセル1日4回(6時間ごと)
ジスロマックⓇ250mg錠(アジスロマイシン水和物)1回2錠1日1回(食後)3日間
クラリスⓇ200mg錠(クラリスロマイシン)1回1錠1日2回(朝・夕食後)〔小児:1回7.5mg/kg 1日2回(朝・夕食後)*〕
*社会保険診療報酬支払基金審査情報では原則として,「クラリスロマイシン(小児用)」を「歯周組織炎,顎炎」に処方した場合,当該使用事例を審査上認める。
〈重症:3群(顎炎)・4群(蜂窩織炎)〉
以下のいずれかを処方する。
ユナシンⓇ375mg錠(スルタミシリントシル酸塩水和物)1回1錠1日2〜3回(朝・昼・夕食後)(詳記必要,適応外使用)
オーグメンチンⓇ250mg配合錠(クラブラン酸カリウム・アモキシシリン水和物)1回1錠1日4回(6〜8時間ごと)(適応外使用)
サワシリンⓇ250mgカプセル(アモキシシリン水和物)1回2カプセル1日3回(朝・昼・夕食後)〔小児:1回15mg/kg 1日3回(朝・昼・夕食後)〕(適応外使用)
ペニシリンアレルギーの場合,以下のいずれかを処方する。
ダラシンⓇ150mgカプセル(クリンダマイシン塩酸塩)1回1カプセル1日4回(6時間ごと)
ケフラールⓇ250mgカプセル(セファクロル)1回1カプセル1日3回(朝・昼・夕食後)〔小児:1回15mg/kg 1日3回(朝・昼・夕食後)〕
グレースビットⓇ50mg錠(シタフロキサシン水和物)1回2錠1日2回(朝・夕食後)
【第二選択経口薬】
炎症の進行期,ペニシリン系,セフェム系に効果が認められない場合は,以下のいずれかに処方変更する。
グレースビットⓇ50mg錠(シタフロキサシン水和物)1回2錠1日2回(朝・夕食後)
ファロムⓇ150mg錠または200mg錠(ファロペネムナトリウム水和物)1回1錠1日3回(朝・昼・夕食後)〔小児:1回5mg/kg 1日3回(朝・昼・夕食後)〕
【注射用抗菌薬】
急性炎症症状が著しい重症の3,4群では入院加療が望ましい。
〈中等症〉
以下のいずれかを処方する。
ユナシンⓇ-S注(アンピシリンナトリウム・スルバクタムナトリウム)1回3g1日2~4回(静注または点滴静注)〔小児:1回75mg/kg 1日3回(静注または点滴静注)(詳記必要,適応外使用)〕
ロセフィンⓇ注(セフトリアキソンナトリウム水和物)1回1〜2g 1日1〜2回(静注または点滴静注)〔小児:1回25〜60mg/kg 1日1〜2回(50〜60mg/kg/日)(静注または点滴静注)〕
〈重症〉
以下のいずれかを処方する。
メロペンⓇ注(メロペネム水和物)1回0.5〜1g 1日3回(30分以上かけて点滴静注)〔小児:1回20mg/kg 1日3回(点滴静注),重症・難治例は1日120mg/kgまで増量可〕
フィニバックスⓇ注(ドリペネム水和物)1回0.25〜1g 1日3回(30分以上かけて点滴静注)〔小児:1回20mg/kg 1日3回(点滴静注),重症・難治例は1日40mg/kgまで増量可〕
〈壊死性筋膜炎など最も重篤な症例〉
メロペンⓇ注(メロペネム水和物)1回0.5〜1g 1日3回(30分以上かけて点滴静注),ダラシンⓇS注(クリンダマイシンリン酸エステル)1日600〜1200mg 分2〜4(30分〜1時間かけて点滴静注)併用(詳記必要)
▶偶発症・合併症への対応
気道狭窄を認め呼吸状態の悪化が予測される症例については,気管切開による気道管理を行う。敗血症性ショックに移行した場合,その循環障害のタイプにより感染症の治療,心機能改善,体液補正などを行う。
▶患者への説明のポイント
歯性感染症は宿主の免疫機能低下により発症すること,十分な安静,栄養摂取,水分摂取が必要であることを説明する。また,再発を防ぐには原因歯の治療が必要であることを説明する。
【参考資料】
▶JAID/JSC感染症治療ガイド・ガイドライン作成委員会歯性感染症ワーキンググループ:日化療会誌. 2016;64(4):641-6.
山本雅絵(東京歯科大学口腔病態外科学講座講師)