不世出の臨床家であり、類まれな文化人でもあった中井久夫(1934~2022)のエッセイに『患者と医師と薬とのヒポクラテス的出会い』というものがある。1974年に先天梅毒による進行麻痺に対して、当時「ピカピカの新薬」であった脳代謝改善薬のヒデルギン・ルシドリールを処方したところ、衰弱しきって家族の顔もわからなくなった患者が、わずか1カ月で夫人と海外で暮らす息子について話をするまでに回復したケースを経験した。それが契機となって、自身もその薬を服用するようになった経緯が記されている。
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