▶治療の実際
まずは十分な外科的切開排膿,搔爬,ドレーン留置を行う。それに伴って培養の結果から,最も感受性の高い抗菌薬を選択して,静脈内投与を行う。投与は,CRPなど炎症の鎮静化が得られるまで行う。最も頻度の高い起炎菌は黄色ブドウ球菌であるため,感受性検査の結果,起炎菌が同定できない場合,黄色ブドウ球菌をターゲットとした抗菌薬の治療を開始する。
【成人の場合】
一手目 :セファゾリンNa注(セファゾリンナトリウム)1回1g 1日3回(8時間ごと)(点滴静注),またはペントシリンⓇ注(ピペラシリンナトリウム)1回1g 1日3回(8時間ごと)(点滴静注)
骨髄炎を併発している場合には,その治療も含めて8週間程度の抗菌薬投与が必要になる。
二手目 :〈効果十分で外来フォローに移行する場合,処方変更〉セフゾンⓇ100mgカプセル(セフジニル)1回1カプセル1日3回(毎食後)
【小児の場合】
一手目 :セファゾリンNa注(セファゾリンナトリウム)50 mg/㎏/日 分3(点滴静注),またはペントシリンⓇ注(ピペラシリンナトリウム)100mg/㎏/日 分3(点滴静注)
二手目 :〈効果十分で外来フォローに移行する場合,処方変更〉ケフラールⓇ細粒小児用(セファクロル)20mg/kg/日 分3(毎食後)
【MRSAの場合】
一手目 :ダプトマイシン注(ダプトマイシン)1回6mg/kg 1日1回(点滴静注または緩徐に静注),またはテイコプラニン注(テイコプラニン)1回600mg 1日2回(点滴静注)2日間,その後1日1回
自覚症状を伴わない筋融解が副作用として認められることがあり,CPKのモニタリングが必要である。
二手目 :〈処方変更〉リネゾリド注(リネゾリド)1回600mg 1日2回(点滴静注)
2週間以上の投与で,血小板減少と貧血や好中球減少などの骨髄抑制が生じることがあるため,慎重な経過観察が必要である。
▶専門家へのコンサルト
基本的には臨床症状から化膿性関節炎を疑ったら,専門家にコンサルトすべきである。その際に,臨床症状のみで抗菌薬の予防的投与を行うことは避けなければならない。必ず,血液培養や採取された関節液の感受性検査を先に行うべきである。
▶患者への説明のポイント
化膿性関節炎は,術後や治療早期の再燃があるため,本人,家族にはその可能性を説明する必要がある。成人の場合は後に軟骨融解を伴う変形性関節症への進行,小児の場合は軟骨や成長軟骨板の損傷を伴っていることもあり,将来的な関節の変形や成長障害をきたす可能性があるため,注意深いフォローアップが必要であることを十分に説明しておく必要がある。
【文献】
1)星野裕信:小児内科. 2022;54(増刊号):660-5.
星野裕信(藤枝市立総合病院整形外科/副院長)