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感染性心内膜炎[私の治療]

登録日: 2023.09.04 最終更新日: 2025.09.20

大原貴裕 (東北医科薬科大学老年・地域医療学教室准教授)

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▶治療の実際

【自己弁IEの場合】

緑色連鎖球菌,ブドウ球菌,腸球菌をカバーする。

〈MRSAの可能性が低い場合,亜急性の臨床経過の場合〉

一手目 :ユナシン-S注(アンピシリンナトリウム・スルバクタムナトリウム)1回3g 1日3~4回(点滴静注),ロセフィン注(セフトリアキソンナトリウム水和物)1回2g 1日1回(点滴静注)併用

〈ペニシリンアレルギーの場合〉

一手目 :塩酸バンコマイシン注(バンコマイシン塩酸塩)1回1g 1日2回または1回15mg/kg 1日2回(レッドマン症候群を避けるため1時間以上かけて点滴静注),ゲンタシン注(ゲンタマイシン硫酸塩)1回2~3mg/kg 1日1回(点滴静注)併用

【人工弁IEの場合】

人工弁IEにおいて40%を占めるブドウ球菌のカバーを行う。

一手目 :塩酸バンコマイシン注(バンコマイシン塩酸塩)1回1g 1日2回または1回15mg/kg 1日2回(レッドマン症候群を避けるため1時間以上かけて点滴静注),ゲンタシン注(ゲンタマイシン硫酸塩)1回2~3mg/kg 1日1回(点滴静注)併用

〈腎機能低下例でバンコマイシン,ゲンタマイシンが使用しにくい場合〉

一手目 :キュビシン注(ダプトマイシン)1回8~10mg/kg 1日1回(点滴静注),ロセフィン注(セフトリアキソンナトリウム水和物)1回2g 1日1回(点滴静注)併用

ダプトマイシンの国内での保険適用は右心系心内膜炎に対してであるが,左心系心内膜炎でも用いられる。また,保険適用量は1回6mg/kgであるが,8~10mg/kgの高用量のほうが有効性が高い。

【IE高リスク患者の予防】

IE高リスクは,通常の人よりもIEを生じやすい中等度リスクと,IEが生じやすいのみならず生じた場合に重症となり命に関わることも多い高度リスク,の2つにわけられる。中等度リスクは通常の弁膜症,心室中隔欠損症などの先天性心疾患,ペースメーカ植え込み後などが含まれ,高度リスクには人工弁置換術後,IE既往,未治療のチアノーゼ性先天性心疾患がある。単独の心房中隔欠損症,冠動脈バイパス術のみではIEリスクとならない。わが国のガイドラインにおいては中等度/高度リスクともに観血的歯科治療(抜歯,口腔内外科処置)時の予防的抗菌薬投与を推奨している。

一手目 :サワシリン250mg錠(アモキシシリン水和物)1回8錠(処置1時間前に1回)

何らかの原因で投与量を減量する場合には,5~6時間後に500mgを追加内服させる。

〈β-ラクタム系抗菌薬アレルギーがある場合〉

一手目 :ダラシン150mgカプセル(クリンダマイシン塩酸塩)1回4カプセル(処置1時間前に1回)

〈経口投与が困難な場合〉

一手目 :ビクシリン注(アンピシリンナトリウム)1回1~2g(手術開始30分以内に静注,筋注,または手術開始時から30分以上かけて点滴静注)

【参考資料】

▶ 日本循環器学会, 他:感染性心内膜炎の予防と治療に関するガイドライン(2017年改訂版). 2019.
https://www.j-circ.or.jp/cms/wp-content/uploads/2020/02/JCS2017_nakatani_h.pdf

大原貴裕(東北医科薬科大学老年・地域医療学教室准教授)


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