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スタチン処方時に知っておきたいノセボ効果

登録日: 2026.09.28 最終更新日: 2026.09.28

多田隼人 (金沢大学附属病院循環器内科病院臨床准教授)

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スタチンの使いわけ

1989年のプラバスタチンの登場以来,わが国では6種類のスタチンが使用可能である。スタチンはLDL-C低下効果によって,スタンダードスタチンとストロングスタチンに分類され,ストロングスタチンはスタンダードスタチンと比較して,よりLDL-C低下効果を有するとされる。

前述の目標設定に引き続き,各薬剤の低下効果に応じてスタチン製剤を選択することになるが,実際には一次予防例も含めてLDL-C値は“the lower,the better”であることが示されている。したがって,特記すべき事情がなければ,まずストロングスタチンを用いるべきである。しかし,後述するように,スタチン不耐患者が一定割合存在するため,そのような場合には,スタンダードスタチンに切り替えてみるのも1つのやり方である。実際にストロングスタチンにおいて不耐であると考えられた症例が,スタンダードスタチンで忍容性があるという症例も多数存在する。

ストロングスタチンの中で,筆者はロスバスタチンを使用することが多い。その理由は,FH診療において,ロスバスタチンは初期用量の2.5mg/日から最大20mg/日まで8倍量まで増量可能なため,最大用量を用いた場合にロスバスタチンのLDL-C低下効果が最も大きいことが期待されるからである。

スタチンの生みの親である遠藤章博士
スタチンの生みの親である遠藤章博士は1971年に三共(現第一三共)でコレステロール合成阻害物質の探索を開始し,6000株に及ぶカビ・キノコの検討を行った。その結果, 1973年に,コメに生えた青カビ(Penicillium citrinum)からコンパクチンを発見した。コンパクチンは,コレステロール合成の律速酵素を阻害するスタチンの原型である。この発見は,後のメバロチンなどの開発につながり,心筋梗塞や脳梗塞の予防に革命をもたらした。

スタチン不耐例に対する対応

高LDL-C血症に対する薬物療法の中心はスタチンである。わが国で生まれた本薬剤が世界中の脂質異常症患者に使用され,動脈硬化性疾患の抑制に多大な貢献をしていることは誠に誇らしい。一方で,1~数%の患者ではスタチン不耐が認められる7)。スタチン不耐にはいくつかの形式があり,筋肉痛などの症状を伴うもの,あるいは症状を伴わないものの,検査値異常(肝酵素上昇や筋逸脱酵素上昇など)がみられる場合がある。スタチン不耐の場合には,エゼチミブ,および/またはPCSK9阻害薬(エボロクマブあるいはインクリシラン)が考慮される。通常,PCSK9阻害薬は,スタチン製剤の最大耐用量との併用が原則であるが,スタチン不耐の場合にはスタチン製剤との併用は不要である。しかし,そもそもスタチン不耐の診断には特段の注意が必要である。

スタチン不耐と考えられる患者においては,ノセボ効果による影響も考慮する必要がある。ノセボ効果を理解する上で,プラセボ効果は重要な概念である。プラセボ効果とは,偽薬効果とも呼ばれ,実際には薬理作用のない偽薬を投与されたにもかかわらず,その薬によって何らかの症状の改善がみられる現象である。一方で,プラセボの投与によって,望ましくない有害事象が現れる現象をノセボ効果と呼ぶ(図6)。ノセボ効果は,治療に対するストレス,恐怖,不安などの否定的な感情によって引き起こされていると考えられている。実際に,スタチン投与におけるノセボ効果について,有害反応によってスタチンの服用を中断した人を対象に,スタチン投与,プラセボ投与,薬剤非投与を1カ月ごとにランダムに割りつけて比較した試験がある。その結果,プラセボ投与時には薬剤非投与時と比較して有害反応の程度が約2倍に増加したほか,スタチン投与時とプラセボ投与時では有害反応の程度に差は認められなかった6)。スタチン処方時に筋肉痛や倦怠感などの有害反応に関する情報を受けた際の不安な感情が,このような症状を誘発する可能性がある。筆者は実際に,有害反応の説明に加えて,本臨床試験の結果やノセボ効果についてもスタチン処方時に説明している。このような説明により,筆者自身の外来では,スタチン不耐を呈する患者はきわめて稀である。したがって,スタチン不耐の診断の際には,このようなノセボ効果の可能性も理解した上で,丁寧に検討する必要がある。

※この記事は,FOCUS「困る脂質異常症と治療薬のイマドキの使い方」の一部を抜粋・編集したものです。


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