不明熱とは,文字通りに解釈すれば「原因がわからない発熱」ということになります。ただ,極論すれば,風邪も原因ウイルスがわからないことがほとんどですが,短期間で自然に治ってしまうので問題にはなりません。このような自然軽快するself-limitedな感染症は,原因がわからなくても不明熱として扱いません。不明熱として扱うのは,原因不明かつ「長引く発熱」です。
まだ原因をちゃんと調べていないのに,不明熱と判断するのも不適切です。不明熱だと判断する前に,前の項で解説したような長引く発熱の原因検索を一通り行うべきです。症状経過や随伴症状に加えて感染症患者との接触歴や野外活動歴,薬剤歴といった病歴を確認し,心雑音や刺し口などの身体所見がないか探し,血液培養を最低2セット採取し,造影CTや心エコーも積極的に検討します。不明熱と判断する前にやっておきたいこと(私案)を表3にまとめました。特に,適切な血液培養をとっておくことは,感染性心内膜炎や菌血症などを見逃さないために大変重要です。

具体的な不明熱の定義として最も有名なのが,1961年にPetersdorfとBeesonが発表した古典的不明熱の定義です。その定義は,「38.3℃以上の発熱が3週間以上続き,1週間の入院精査でも原因不明」というものでした25)。その後,医療事情の変化により,「38.3℃以上の発熱が3週間以上続き,3回の外来もしくは3日間の入院精査でも原因不明」と定義が修正されました26)。しかし,これらの定義はあくまで研究目的に作成されたものであり,実臨床にそのまま適用できるものではありません。精査の内容までは規定されていませんし,3週間という発熱期間の長さも,実際には経過からself-limitedな感染症が除外できれば十分です。既存の不明熱の定義は実臨床にそぐわないため,本稿では不明熱を「一通り調べても原因がわからない」「長引く発熱」と,あえてあいまいに定義することにします。
Point
不明熱とは
不明熱とは,「ちゃんと調べても原因がわからない」+「長引く発熱」。適切な血液培養をとらずに不明熱と言ってはいけない。
※この記事は,FOCUS「どう考える? 長引く発熱・不明熱の鑑別」の一部を抜粋・編集したものです。文献リスト等については,製品版を参照ください。