病院経営の教科書 数値と事例で見る中小病院の生き残り戦略【第2版】
第2版のまえがき
第1章 病院経営を取り巻く環境
1. 病院経営の鍵となる指標
1.1 病床稼働率は平均80%強
1.2 初診率は11%
1.3 入院ルートは外来/在宅40%・救急10%・紹介50%
入院ルートの分析からわかること◉各ルートの入院患者を増やすには
1.4 外来診療圏は5 km、入院診療圏は10 km
診療圏調査の基本的な考え方◉急性期病院・ケアミックス病院における診療圏の考え方◉専門病院における診療圏の考え方
2. 病院財務の概観
2.1 経常利益率2%、借入金は売上の3分の1
2.2 病床稼働率の損益分岐点は80%
入院診療の損益分岐点の算出法◉病院種類・病床規模別に見た入院損益分岐点
2.3 外来患者数の損益分岐点は病床の1.3〜2.7倍
外来診療の損益分岐点の算出法◉病院種類別に見た外来損益分岐点◉病床規模別に見た外来損益分岐点
2.4 借入金は売上の1.5倍が限界
3. 病院経営のマクロ統計
3.1 民間病院の3割は赤字
「病院運営実態分析調査」に見る赤字病院の比率◉「病院経営管理指標」に見る赤字病院の比率
3.2 リハビリ・手術・DPCは年率5%の伸び
3.3 全病床の4分の3が診療報酬包括化病床に
出来高払いから包括払いへ◉包括払いの基本的な考え方◉包括化病院・病床の広がり◉診療報酬包括化が病院経営に与えるインパクト
3.4 医療費増加率は患者増加率を下回る
医療費増加と患者数の関係◉診療報酬が医療費に与える影響◉今後10年間、引き続き医療密度を上げる努力が求められる◉2025年〜2040年以降、本当のマイナス改定が始まる
4. 人事・労務の実態
4.1 11年間で勤務医2割増、看護師4割増、PT 2.6倍
病院の従事者数の推移◉医療専門職の働き方の変化◉職種別の供給見通し
4.2 医師当たり患者数は20年間で3〜4割減
4.3 医師の年収は10年間で2%アップ
4.4 医療職の離職率は平均15%
5. 設備投資の考え方
5.1 CTは2年、MRIは5年で採算が合う
5.2 病院の耐震化はまだ75%
5.3 病院建設単価は9年で53%上昇
6. 競争・連携相手の動きを読む
6.1 病院数は20年で11%減(50床未満は37%減)
6.2 一般病床の54%がDPC病床に
DPC/PDPS制度のポイント◉拡大するDPC病床◉DPC制度と急性期病院の将来
6.3 病院の開設は2割減、廃止は横ばい
病院の開設・廃止の動向◉最近10年間の傾向分析◉病院の新規参入・撤退をどう考えるか
7. 患者の構造変化
7.1 入院受療率は30年で12%減(外来受療率は微増)
年齢別の受療率◉延べ患者数の推移◉高齢者の受療率の推移◉傷病別受療率の推移◉受療率から見た患者動向の変化(まとめ)
7.2 主要死因の死亡率は各世代で減少中
7.3 肝臓・肺・食道がんの生存率は 15年間で5割以上改善
8. 人口動態と国民医療費
8.1 高齢化によって看取り場所が30万人不足
世代間の支え合い構造の崩壊◉独居高齢者の増加◉看取り数の急増
8.2 認知症高齢者は20年間で3割増
認知症患者数の推移◉認知症高齢者向けの施策◉認知症ケアの社会的資源をどう確保するか
8.3 出生数は激減したが1施設当たりでは増加中
8.4 医療費の38%は税金から
第2章 病院経営の戦略
1. 典型的な経営戦略失敗のプロセス
経営陣の慢心(甘い見込み)◉エース医師・看護師の退職◉人心荒廃と設備の老朽化◉無理な設備投資◉キャッシュフローの行き詰まり
2. 経営戦略の基本類型
経営戦略とは何か◉差別化戦略◉コスト・リーダーシップ戦略◉集中戦略
3. 集中戦略としての機能分化とその効果
4. 経営戦略策定の基本的なフレームワーク
5. 経営を成功に導くための戦略構築の視点
自院が置かれている状況を客観的に把握する◉患者ニーズと制度の流れを読む◉いくつかの戦略オプションを構築する◉投資対効果・費用対効果・リスクを把握する◉経営者自身が信じ、やりきることができる戦略を選択する
第3章 病院経営の実践
1. 経営戦略
1.1 高齢者病院から産婦人科病院への転換
産婦人科への集中戦略を決意◉経営陣の本気度がスタッフの意識を変えた◉5年かけて全病棟を転換
1.2 一般病院からコミュニティホスピタルへの転換
地域包括ケアの中核病院を目指す◉在宅医療を担う医師を確保する◉在宅医療の導入による増収効果
1.3 精神科病院の改革
職員に経営状況を開示する◉一般病院との連携、アウトリーチ部門の強化◉医師の採用、リハビリをはじめとする各部門の強化◉10年間で収益が10億円増◉精神科病院が取り得る戦略のオプション
1.4 効果的な新棟建設計画
市場ニーズを捉えた明確な戦略◉戦略に基づいた、メリハリのある設計方針◉戦略を実現するための人材・業務ノウハウ◉無理のない確実で余裕のある資金計画◉建設計画の実務を担う人材の確保
1.5 診療報酬制度の方向性を見通す
2025年に向けた診療報酬改定の基本的な考え方◉診療報酬改定の最近のトピックを振り返る◉診療報酬改定の先を読む
1.6 多様な経営戦略
水平展開によるエリア拡大戦略◉垂直統合による地域ドミナント戦略◉介護・住宅事業への進出◉超大型医療機器への投資による差別化戦略◉海外への事業展開◉医療技術のノウハウ化とフランチャイズモデル
2. ガバナンス
2.1 ガバナンスを改革することの重要性
兄弟喧嘩がガバナンスの奪い合いに発展したケース◉創業者から息子達への権限委譲がスムーズでなかったケース◉経営不振により第三者に病院運営を乗っ取られかけたケース◉ガバナンスの重要性
2.2 理事会・社員総会の運営
2.3 病院長が持つべきリーダーシップ
リーダーシップのスタイル◉リーダーを形づくる要素◉ボス型リーダーと調整型リーダー
3. 財務
3.1 損益計算書と貸借対照表
財務諸表の確認を怠った事例◉損益計算書の見るべきポイント◉貸借対照表の見るべきポイント◉時系列比較とベンチマーク比較
3.2 KPIによる経営管理
KPIを設定することの意味◉KPIを設計する際の考え方◉KPIの運用例
3.3 銀行取引のコツ
医療機関向け融資というビジネス◉銀行の支援を引き出すにはコツがある
3.4 資金調達の実際
補助金・助成金◉融資◉リース◉診療報酬債権の流動化◉資産売却・不動産活用◉病院債
3.5 経営再建の手法
返済のリスケジュール、土地の売却◉メインバンクによる金融支援◉民事再生◉経営再建の手法◉財務状況に合わせた再建手法を選択する
4. 組織
4.1 戦うチームへの変貌
誰も責任を取らず、業務が停滞してしまった◉院長の意識改革からスタート◉経営体制の改革◉組織の分権化◉経営状況の開示
4.2 組織の骨格作り
組織が組織として機能していない病院の事例◉部署ごとの責任を明確にし、会議で確認する◉組織図の階層が意味するもの◉組織作りのポイント
4.3 組織文化の改革
拡大移転したものの、伸び悩んでいるケアミックス病院の事例◉理念・規範・戦略を再定義する◉まずは幹部職員の考えを統一する◉次にスタッフへの浸透を図る◉改革の効果は非常にゆっくりと現れる
5. マーケティング
5.1 マーケティングにおける現状把握
マーケティングの基本は現状把握から◉外来患者の受診行動◉入院患者の受診行動◉健診受診者・在宅患者の受診行動◉マーケティングデータの取り方
5.2 マーケティングの実務
広告宣伝活動◉広報活動◉院内における広告・広報活動◉患者へのマーケティング活動◉連携先・事業所へのマーケティング活動◉従業員向けマーケティング活動◉患者の受診行動プロセスとマーケティング活動
5.3 Webマーケティングの効果
webマーケティングの成功例と失敗例◉webマーケティングの基本的な考え方
5.4 自己負担の価格
自己負担の差が集患に影響した事例◉保険外自己負担の実態◉医療機関の収益と患者自己負担の関係
6. 人事・労務
6.1 問題スタッフへの対応
問題スタッフを放置せず、早期に対応を検討する◉就業規則と雇用契約を確認する◉本人への指導は人格否定にならないよう、問題行動に焦点を当てる◉指導内容は書面で残し、本人の言い分も記録する◉解決を急がず、本人と将来の見通しを共有し、納得してもらう
6.2 採用プロセスの強化
採用を強化するための現状分析◉採用プロセスにマーケティングの考え方を導入する◉今いるスタッフを大事にすることが、採用強化につながる
6.3 人事考課の基礎
7. 業務
7.1 会議の運営
組織が動かない原因は会議にあった◉会議の運営を改善する◉上手な会議運営は経営効率を上げる
7.2 労働生産性の向上
労働生産性とは何か◉労働生産性分析の考え方◉労働生産性のベンチマーク◉非生産性の要因◉労働生産性を向上させるための手法
7.3 購買管理の実践
7.4 被災からの復旧とBCPの策定
病院が浸水、孤立してしまった◉復旧に向けた課題マップを作る◉復旧の鍵となる課題◉事業継続計画(BCP)立案のポイント
7.5 不正を防ぐ内部統制
事務長が横領をしていた◉業務上横領の手口◉不正なお金の動きを見逃さない◉ハラスメント対策◉内部統制のチェックリスト