膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)の発がん形態として,IPMN自体が増大し悪性化するIPMN由来がんと,IPMNと離れた部位に発がんするIPMN併存がんがある。IPMNは画像形態学的に主膵管型,混合型,分枝型に大別され,壁在結節の有無や主膵管径,嚢胞径,臨床症状の有無などを考慮し,診療方針が決定される。主膵管拡張例や壁在結節を有する症例では悪性の頻度が高く,手術もしくはさらなる精査が推奨されている。一方,分枝膵管拡張のみを認める分枝型IPMNでは,悪性の頻度は高くないものの,多くの観察研究において経過観察中の発がん率が年率1%前後と報告されており,切除適応とならない症例においても膵発がんの高危険群として定期的な経過観察が望まれる。また,膵切除術後の残膵においてIPMNや膵癌の再発が認められるため,術後例においても残膵の定期的な経過観察が必要である。
多くの施設では,発見の遅れがより致命的となりうる併存がんのリスクを念頭に置き,造影CTやMRIを用いて半年ごとの経過観察が行われているが,経過観察の間隔や期間,方法について明確な基準はない。適切な経過観察法を明らかにすること,また,経過観察例の中からより発がんリスクの高い集団を同定することが,IPMNにおける膵癌サーベイランスの重要な課題として残されている。現在,これらの問題を明らかにするために,切除適応とならない経過観察例を対象とした大規模な前向き観察研究が日本膵臓学会主導で行われており,その結果が待たれる。
【参考】
▶ 山口幸二:膵臓. 2017;32(1):62-70.
【解説】
重川 稔 大阪大学消化器内科