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(3)向精神薬による循環器障害 [特集:向精神薬がもたらす身体合併症]

No.4772 (2015年10月10日発行) P.31

藤井久彌子 (獨協医科大学精神神経医学講座講師)

尾関祐二 (獨協医科大学精神神経医学講座准教授)

下田和孝 (獨協医科大学精神神経医学講座主任教授)

登録日: 2016-09-08

最終更新日: 2017-02-10

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  • 向精神薬の服用と心臓突然死の関連が知られており,投薬と関連した糖脂質代謝系の問題から生じる心筋梗塞や致死性不整脈などが原因と考えられている

    抗精神病薬・抗うつ薬によって,起立性低血圧が生じる可能性がある

    抗精神病薬・抗うつ薬はQT延長を起こす可能性があるため,そのリスクを知っておく必要がある

    1. 向精神薬の循環器系への影響

    向精神薬投与で突然死が増加することは知られている。また,抗精神病薬・抗うつ薬には,循環器系への作用があることが以前より指摘されている。その一方で,たとえば統合失調症患者が未治療であることで死亡率が上がることが報告されており1),向精神薬の副作用のみを強調するべきではない。それらをふまえた上で症例ごとに危険性を評価し,向精神薬治療の恩恵を十分に得ることができるよう心がけることが重要である。本稿では,向精神薬の循環器系への影響に焦点を絞り述べる。
    循環器障害に関わる働きは,大まかに自律神経系・心血管系・心臓伝導系への影響に分類できる。自律神経系への影響は,血圧,脈拍,およびその変動などに現れる。心血管系への影響の代表的な疾患が虚血性心疾患となる。
    心臓伝導系への影響では,致死的な不整脈が挙げられる。突然死に関わるのは,心血管系への影響の代表と言える心筋梗塞をはじめとする虚血性心疾患と致死性不整脈であるが,虚血性心疾患に関しては,主に糖脂質代謝系の問題が原因となるため,ここでは詳細には触れず他稿にゆずる。

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