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肝癌の分子標的治療と分岐鎖アミノ酸製剤【併用群の肝機能において興味深い結果が報告されており,今後関連が注目される】

No.4874 (2017年09月23日発行) P.51

巽 智秀 (大阪大学消化器内科講師)

竹原徹郎 (大阪大学消化器内科教授)

登録日: 2017-09-21

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肝細胞癌に対する分子標的治療薬としてソラフェニブが承認され,JSHコンセンサスに基づく肝細胞癌治療アルゴリズムにおいても,適応が拡大している。一方でソラフェニブは,手足症候群,高血圧,肝障害など多彩な副作用を示すため,長期間のソラフェニブ治療を可能にするためには,副作用対策が重要である。

分岐鎖アミノ酸(BCAA)製剤は,mTORC1を活性化することでアルブミン合成を促進する一方で,肝硬変患者の肝発癌を抑制することが示されている。Imanakaらの報告1)によると,ソラフェニブ治療中の患者273例中,ソラフェニブ開始後の肝機能の低下によりBCAAを開始した17例を除いた256例(BCAA併用55例,BCAAなし201例)を解析した結果,肝機能がChild-Pugh分類Aの患者群では,BCAA併用でoverall survival(OS)の有意な延長を認めた。

BCAA併用ありとなしの患者群の臨床的背景を比較すると,BCAA併用ありの患者では血小板,アルブミン,プロトロンビン時間の数値が有意に低く,肝機能が悪い傾向にあった。BCAA併用の有用性の一因にBCAAによる肝機能の改善があると思われるが,むしろ,治療前肝機能が悪いためにBCAAを併用していた患者群のOSのほうが良いことは,興味深い結果であった。今後,新規の分子標的治療薬が承認予定で,その治療効果とともにBCAAとの関連も注目される。

【文献】

1) Imanaka K, et al:Hepatol Res. 2016;46(10): 1002-10.

【解説】

巽 智秀*1,竹原徹郎*2 *1大阪大学消化器内科講師 *2同教授

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