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肝細胞癌治療への新たなオプション:beads TACE【cTACEとbeads TACEの比較検討により,効果的な使いわけの確立に期待】

No.4859 (2017年06月10日発行) P.46

高森頼雪 (帝京大学内科病院准教授)

滝川 一 (帝京大学内科病院主任教授)

登録日: 2017-06-06

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肝細胞癌の治療として,従来からの肝動脈化学塞栓療法(conventional TACE:cTACE)に対して,2014年にエンボスフィア,へパスフィア,ディーシービーズが相次いで承認され,beads TACEとして注目されている。その特徴は1~2mmの塞栓物質を使用するcTACEに対して,100~500μmの微小球状塞栓物質を用いることである。

cTACEと比較して,長所は,①より末梢の動脈を塞栓するため正常肝への障害が少ない,②永久塞栓物質であり塞栓効果が持続する,③へパスフィア,ディーシービーズは薬剤溶出能を有し,抗癌剤の徐放効果が期待できる(drug-eluting beads TACE:DEB-TACE),などが挙げられる。一方,短所は,①腫瘍を完全に塞栓する効果は劣る,②被膜浸潤や衛星結節には無効である,③永久塞栓物質が腫瘍組織外へ流入した際の重篤な合併症,などが挙げられる。

海外では既にbeads TACEが広く普及しておりcTACEとのRCTやmeta-analysisが数多くみられ,beads TACEはcTACEより優位な成績であるとの報告が多い1)。しかしこの結果を,世界に有する肝細胞癌に対する診断と技術を持つわが国にそのまま当てはめることはできない。
今後,わが国での症例の蓄積により,cTACEとbeads TACEの効果的な使いわけが確立されることを期待したい。

【文献】

1) Zou JH, et al:J Dig Dis. 2016;17(8):510-7.

【解説】

高森頼雪*1,滝川 一*2 *1帝京大学内科病院准教授 *2同主任教授

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