株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

CLOSE

リンパ浮腫[私の治療]

No.5189 (2023年10月07日発行) P.41

赤石諭史 (日本医科大学武蔵小杉病院形成外科教授)

外薗 優 (日本医科大学武蔵小杉病院形成外科)

登録日: 2023-10-08

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
    • 1
    • 2
  • next
  • リンパ管が閉塞して,リンパ流が停滞したことで四肢がむくむ病態であり,一次性と二次性に大別され,前者は原因が明らかでない特発性(35歳未満を早発性,35歳以上を晩発性と言う)と,遺伝子異常等に伴う先天性に分類される。一方,二次性の原因にはがん治療に伴うリンパ節郭清や放射線照射に起因するものをはじめ,外傷やフィラリア症(日本では1978年以降発症者が出ていない)などがあり,全世界的にはフィラリア症の占める割合が大きいが,わが国で最も多くみられるのはリンパ節郭清や術後照射など,がん治療に伴う四肢のリンパ浮腫である。
    リンパ流のうっ滞に伴い,蜂窩織炎を合併した状態で受診されるケースがしばしばみられる。

    ▶診断のポイント

    浮腫の原因は,静脈系または内科的疾患であることがほとんどである。全身や両側の四肢が急にむくんだ場合,心不全,腎不全,肝不全,甲状腺機能低下症,低蛋白血症(低栄養),廃用性浮腫,薬剤性浮腫(抗癌剤,カルシウム拮抗薬),肥満・脂肪性浮腫,起立性浮腫,炎症性浮腫,血管性浮腫(Quincke浮腫,遺伝性血管性浮腫)といった内科的原因を考える必要がある。

    また,浮腫と同時に痛みを伴う場合は,深部静脈血栓症や閉塞性動脈疾患,蜂窩織炎などが考えられ,下肢静脈エコーや血液検査,CT検査が必要となる。これらを除外した後,患者の現病歴や既往歴などからリンパ浮腫を疑った場合,画像評価(リンパシンチグラフィーやSPECT-CTなど)を施行しリンパ浮腫の検索を行う。必要に応じて形成外科等の専門医に相談する。一般的に,積極的な治療対象となるのは二次性リンパ浮腫であることが多い。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    蜂窩織炎を併発している場合は抗菌薬〔ケフレックス(セファレキシン)〕を投与し,消炎を図る。疼痛を伴う場合は消炎鎮痛薬〔カロナール(アセトアミノフェン),ロキソニン(ロキソプロフェンナトリウム水和物)〕を併用投与する。その後,リンパ浮腫の治療へ移行する。患肢の周径を定点的に計測し,画像所見と併せて国際リンパ学会の病期分類(Stage0~Ⅲ)およびリンパシンチグラフィーに基づく重症度分類(TypeⅠ~Ⅴ)による重症度判定を行った後,それぞれに見合った治療法を選択する。現在リンパ浮腫の国際的な標準治療とされている複合的理学療法(complex decongestive physiotherapy:CDP)を第一に行いつつ,手術適応〔顕微鏡下リンパ管細静脈吻合術(LVA)〕の是非について判断する。重症度分類Type Ⅱ~ⅣはLVAの良い適応とされる。

    残り956文字あります

    会員登録頂くことで利用範囲が広がります。 » 会員登録する

    • 1
    • 2
  • next
  • 関連記事・論文

    もっと見る

    関連書籍

    もっと見る

    関連求人情報

    公立小浜温泉病院

    勤務形態: 常勤
    募集科目: 消化器内科 2名、呼吸器内科・循環器内科・腎臓内科(泌尿器科)・消化器外科 各1名
    勤務地: 長崎県雲仙市

    公立小浜温泉病院は、国より移譲を受けて、雲仙市と南島原市で組織する雲仙・南島原保健組合(一部事務組合)が開設する公設民営病院です。
    現在、指定管理者制度により医療法人社団 苑田会様へ病院の管理運営を行っていただいております。
    2020年3月に新築移転し、2021年4月に病院名を公立新小浜病院から「公立小浜温泉病院」に変更しました。
    6階建で波穏やかな橘湾の眺望を望むデイルームを配置し、夕日が橘湾に沈む様子はすばらしいロケーションとなっております。

    当病院は島原半島の二次救急医療中核病院として地域医療を支える充実した病院を目指し、BCR等手術室の整備を行いました。医療から介護までの医療設備等環境は整いました。
    2022年4月1日より脳神経外科及び一般外科医の先生に常勤医師として勤務していただくことになりました。消化器内科医、呼吸器内科医、循環器内科医及び外科部門で消化器外科医、整形外科医の先生に常勤医師として勤務していただき地域に信頼される病院を目指し歩んでいただける先生をお待ちしております。
    又、地域から強い要望がありました透析業務を2020年4月から開始いたしました。透析数25床の能力を有しています。15床から開始いたしましたが、近隣から増床の要望がありお応えしたいと考えますが、そのためには腎臓内科(泌尿器科)医の先生の勤務が必要不可欠です。お待ちいたしております。

    ●人口(島原半島二次医療圏の雲仙市、南島原市、島原市):126,764人(令和2年国勢調査)
    今後はさらに、少子高齢化に対応した訪問看護、訪問介護、訪問診療体制が求められています。又、地域の特色を生かした温泉療法(古くから湯治場として有名で、泉質は塩泉で温泉熱量は日本一)を取り入れてリハビリ療法を充実させた病院を構築していきたいと考えています。

    もっと見る

    関連物件情報

    もっと見る

    page top