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「全世代型社会保障構築会議報告書」をどう読むか? [深層を読む・真相を解く(128)]

No.5151 (2023年01月14日発行) P.54

二木 立 (日本福祉大学名誉教授)

登録日: 2022-12-27

最終更新日: 2022-12-27

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全世代型社会保障構築会議(座長・清家篤元慶應義塾長)は昨年12月16日に「報告書」を、岸田文雄首相に提出しました。本年(以降)の社会保障改革はそれに盛り込まれた提案を踏まえて進められます。本稿では、「報告書」の内容を過去の類似の2つの報告書と比較しつつ、複眼的に検討します。

「報告書」の構成─過去の報告書と比較

「報告書」は本文25頁で、短い「Ⅰ. はじめに」を除いて、「Ⅱ. 全世代型社会保障の基本的考え方」(総論)と「Ⅲ. 各分野における改革の方向性」(各論)の2部構成です。Ⅲは次の4本柱です。「1. こども・子育て支援の充実」、「2. 働き方に中立的な社会保障制度の構築」、「3. 医療・介護制度の改革」、「4. 『地域共生社会』の実現」。

菅義偉内閣時代の「全世代型社会保障検討会議最終報告」(2020年12月)がわずか5頁にすぎず、内容的にも少子化対策と医療改革(後期高齢者の2割負担導入)のみで、分量・内容とも史上「最薄」であったのと比べると、よほど充実しています。

しかし、2013年の「社会保障制度改革国民会議報告書」(本文46頁)と比べると新味に欠けます。2013年報告書は、「医療・介護分野の改革」に限定しても、「医療・介護サービスのネットワーク化」「競争よりも協調」、「データに基づく医療システムの制御」、「病院完結型医療」から「地域完結型医療」への転換、「治す医療」から「治し・支える医療」への転換等、その後の医療制度改革の指針となった多くの斬新な提案をしましたが、今回の「報告書」にはそれに匹敵する提案は含まれていません。

以下、報告書の記述順に検討します。

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