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複数ワクチンの同時接種は可能か?

登録日:
2018-06-21
最終更新日:
2018-06-21

No.4856 (2017年05月20日発行) P.62 質疑応答

ある専門家によれば,どのような種類の予防接種の同時接種も可能とのことで,現実に実施されています。その一方で,メーカーの添付文書によれば,「生ワクチンと不活化ワクチンは接種間隔を1カ月あける」となっています。どちらが正しいのでしょうか。

(高知県 F)


【回答】

2008年にインフルエンザ桿菌(Hib),2010年春から小児用の結合型肺炎球菌ワクチン(PCV7),ヒトパピローマウイルスワクチン(HPV)が認可され,暫定的に定期接種に組み込まれてきました。多くの外国製のワクチンが導入され,Hib,PCV,HPVワクチンは2013年から定期接種に組み込まれました。HPV以外は乳幼児が対象となり,生後2カ月からの接種となります。

2011年3月にはDPT(ジフテリア・百日咳・破傷風),Hib,PCV7を含めた同時接種後の死亡例が報告され,一時中断されました。しかし,その頻度は外国の報告と差がないことから,再開されました。DPT/IPV(DPT/不活化ポリオ)4混,Hib,PCV7以外にも,2016年からはB型肝炎ワクチンも定期接種となりロタウイルスワクチンも任意接種のワクチンとして使用できるようになりました。過密なスケジュールの中で医師が必要と認めた場合には,同時接種も可能となりました1)

DPT/IPV4混,Hib,PCV7,B型肝炎ワクチンは不活化ワクチンで,接種後に局所で炎症反応を惹起することで獲得免疫を誘導します。接種1週後までは免疫系のマーカーが変動しています。ロタウイルスワクチン,BCG,MR(麻疹・風疹),水痘,ムンプスワクチンは生ワクチンで,生体内で増殖し免疫応答を誘導することになります。ロタウイルスワクチンは経口ワクチンで免疫の場が腸管であることから,他の不活化ワクチンとの同時接種も問題はないと思われます。

こうした生ワクチンは,生体内での増殖は4~7日後にピークを認め,ウイルスRNA,DNA,増殖過程で生じる一部の二本鎖RNAは自然免疫系に刺激を入れ,IFN-α/β,炎症性サイトカインを産生することで獲得免疫を誘導します2)。こうしたバイオマーカーの変化は,接種3週後には接種前の状態に戻り,臨床的に問題になることはなく,生ワクチン接種後に他のワクチンを接種する場合には1カ月あけることになっています。

日本小児科学会の同時接種に対する考え方では,生ワクチンと不活化ワクチンとの同時接種でも免疫原性,安全性に問題はなく,接種できるワクチンの数も原則制限はないとされていますが,複数の不活化ワクチンの同時接種では発熱率が高くなること,本数も6~7本の同時接種後の副反応例も報告されています。本当に6~7本の同時接種の必要性があるのか,同時接種の組み合わせも含めて節度ある同時接種が望まれます。

メーカーの添付文書については,承認時の内容を変更するにはメーカー主導の臨床治験を実施して,その結果に基づいて変更する必要があり,現実とギャップがあります。

【文献】

1) 予防接種ガイドライン等検討委員会, 編:予防接種実施者のための予防接種必携. 平成22年度版. 予防接種リサーチセンター, 2010, p46.

2) Nakayama T:Vaccine. 2016;34(47):5815-8.

【回答者】

中山哲夫 北里生命科学研究所ウイルス感染制御特任教

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