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嚥下障害

登録日:
2017-03-16
最終更新日:
2017-07-25
兵頭政光 (高知大学医学部耳鼻咽喉科学教授)
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  • ■疾患メモ

    嚥下障害は,食塊を口腔から胃まで搬送する過程の障害によって起こる様々な症状を総称する。

    口腔,咽頭,喉頭,食道あるいはその周囲組織の器質的病変により食物の通過が障害される器質的嚥下障害と,嚥下に関与する神経・筋の機能障害により食塊の搬送や気道防御に異常をきたした機能的嚥下障害に大別される。

    高齢者では肺炎が主要な死因であるが,その原因として嚥下障害が大きな問題となっている。

    ■代表的症状・検査所見

    【症状】

    嚥下は,口腔準備期(食物咀嚼,食塊形成),口腔期(食塊の咽頭への搬送),咽頭期(食塊の食道への搬送),および食道期(食塊の胃への搬送)にわけられる。

    口腔準備期および口腔期障害では,口腔からの食物漏出,食物の口腔内残留などがある。

    咽頭期障害では誤嚥が最も重要で,そのほか嚥下困難,咽頭残留感,鼻咽腔逆流などがある。

    食道期障害では嚥下困難,食物残留感,食物逆流などがみられる。

    また,嚥下障害に随伴する症状として,発熱や喀痰増加,食事時間の延長,食物嗜好の変化などがある。

    【検査所見】

    嚥下の検査は,嚥下障害の原因を診断する原因診断と,嚥下機能がどの段階でどの程度障害されているかを診断する病態診断を目的とする。

    臨床的には,嚥下内視鏡検査および嚥下造影検査が重要である。

    嚥下内視鏡:代表的所見として,非嚥下時には鼻咽腔閉鎖不全,声帯麻痺や咽頭麻痺,喉頭蓋谷や梨状陥凹の唾液貯留,声門閉鎖反射の惹起性低下などがある。また,少量の着色水などの検査食嚥下時には,嚥下反射の惹起遅延,嚥下後の咽頭残留,誤嚥などがある(図1)。嚥下器官の運動機能のみならず,感覚機能も評価することがポイントである。

    18_56_嚥下障害

    嚥下造影:口腔期には造影剤の口腔保持や口腔から咽頭への送り込み障害が,咽頭期には鼻咽腔逆流,咽頭収縮不全,喉頭挙上の遅れや挙上量の減少,食道入口部通過障害,下咽頭の造影剤残留,誤嚥などが代表的である。食道期には蠕動運動の低下や器質的異常などがみられる。

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