□小児の滲出性中耳炎は自然治癒が期待できることから,3カ月は経過観察が基本である。
□発症から3カ月以上を経過した場合,原因と考えられる鼻副鼻腔炎等の疾患があればその治療を選択する。鼓膜換気チューブ留置術は難聴の程度と鼓膜の病的変化の有無で検討する。
□小児の危険因子として,ダウン症,口蓋裂,頭蓋・顔面奇形などの先天性疾患,アデノイド,鼻副鼻腔炎,胃食道逆流(gastroesophageal reflux:GER)が挙げられる。社会環境因子としては,乳児期の哺乳状態,兄弟の有無,受動喫煙,衛生環境,おしゃぶりの使用,鼻すすりの癖などが挙げられる。
□成人の場合は上咽頭腫瘍の初発症状が滲出性中耳炎の場合があるため,鼻咽腔ファイバースコープを用いてその有無を必ず確認する。
□3歳未満の低年齢児は反復性中耳炎と移行しあうことが多いため,慎重な観察が必要である。
□鼻処置,耳管通気(通気管,自己通気など)に加え薬物療法を行う。
□鼻副鼻腔炎の存在は中耳への感染源になり,また鼻咽腔粘膜の炎症性変化のため耳管機能に影響する。よって合併する鼻副鼻腔炎に対して適切な治療を行う必要がある。鼻ネブライザー,鼻処置に加え14員環マクロライド薬の少量長期投与(マクロライド療法)が有効である。ただし,3歳以上の症例でアデノイドの合併のないものとする。
□アレルギー性鼻炎は滲出性中耳炎の増悪因子である。鼻咽腔のアレルギー性炎症は,鼻咽腔粘膜のみならず耳管咽頭口,さらには耳管粘膜にも浮腫を生じる原因となり,耳管機能に影響を与える。
□両側中等度以上の難聴は両側鼓膜換気チューブ留置の絶対適応である。
□一側中等度以上難聴でも鼓膜の病的変化が強い場合は鼓膜換気チューブ留置を考慮する。
□軽度難聴の場合でも構音障害,言語発達遅滞,学習障害等,生活に支障をきたす場合は鼓膜換気チューブ留置術を考慮する。
□前述した鼓膜換気チューブ留置術の適応症例で,かつアデノイドによる鼻閉,睡眠時呼吸障害がある場合は同時にアデノイド切除術を考慮する。
□遷延化した滲出性中耳炎では鼓膜全体が高度に陥凹かつ菲薄化し,いわゆるatelectasisの状態となることが多い。通常の鼓膜換気チューブ留置では,短期の脱落や永久穿孔をきたす場合が多い。このような症例にはsubannular tubeが適応となる。
□鼓膜換気チューブの合併症として,永久穿孔,鼓膜の石灰化,菲薄化がかなりの頻度で生じる。術前のインフォームドコンセントを十分に行う。
□遷延化した滲出性中耳炎では,鼓膜全体が青色に見える青色鼓膜を呈することがある。特に青年期以降ではコレステリン肉芽腫を生じている場合があるため,CT等での画像診断が必要である。
□口蓋裂児,ダウン症児では高頻度に滲出性中耳炎がみられ,また遷延化する症例がほとんどである。補聴器を選択するか鼓膜換気チューブを選択するか,十分に検討する必要がある。
□まず上咽頭腫瘍の否定を行う。
□少量の貯留液でも不快感を強く訴える。いったん耳管周囲の抗炎症を目的とした薬物療法を行う。
□薬物療法で改善しない場合は副腎皮質ステロイド(デキサメタゾン)の鼓室内注入を行う。
□改善がみられなければ鼓膜換気チューブ留置を行う。
□自然治癒が多い疾患ではあるが,稀に癒着性中耳炎,真珠腫性中耳炎に移行することもあるため,完治するまで通院することが必要である。
□鼻すすりも難治化の一因であるため,鼻すすりをしないように指導する。
□前述した社会環境因子の改善を検討する。
▶ 日本耳科学会, 他, 編:小児滲出性中耳炎診療ガイドライン2015年度版. 金原出版, 2015.
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