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うっ血乳頭

登録日:
2017-03-16
最終更新日:
2017-06-22
柏井 聡 (愛知淑徳大学健康医療科学部視覚科学教授)
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  • ■疾患メモ

    頭蓋内圧亢進による視神経乳頭の腫脹,隆起をうっ血乳頭(papilledema)と言う。うっ血乳頭は,小児の水頭症のように脳外科的緊急状態が含まれ,視神経乳頭が腫脹ないし混濁していれば,まず,うっ血乳頭を除外しなければならない。

    診断は,眼科的に疑い,脳の画像検査後,脳脊髄圧を測定し確定する。

    治療は,原因疾患に基づき,脳外科医あるいは神経内科医による。眼科は,視機能および視神経(網膜神経線維層)の構造について定量的に経過を追い,治療医と相互に緊密な連絡を取り診療連携に努める。

    ■代表的症状・検査所見

    【症状】

    一過性霧視:姿勢変動時の片眼ないし両眼の数秒以内におさまる一過性霧視は,腫脹した視神経乳頭の一過性灌流障害によるうっ血乳頭の唯一の初期症状である。

    複視:脳脊髄圧亢進に基づく非特異的な外転神経の圧迫による両眼性複視を訴えることがある。

    【検査所見】

    〈視力〉

    うっ血乳頭は,検眼鏡的に完成した状態でも,盲点の拡大程度で,黄斑浮腫や脈絡膜皺襞形成ないし網膜下新生血管膜からの出血が黄斑部へ及ばない限り視力は低下しない。しかし鞍上部腫瘍,特に小児では,腫瘍の進展に伴い第3脳室のモンロー孔を閉塞しうっ血乳頭をきたすほど大きくなり,原疾患による視神経・視交叉接合部の障害による視力低下が共存することがあり,年齢によって鑑別の仕方が異なる。

    〈視野〉

    検眼鏡的に視神経乳頭が腫脹すると,視野検査上,乳頭周囲の網膜剥離による屈折性のマリオット盲点拡大が初期変化で,うっ血乳頭が慢性化すると緑内障様の網膜神経線維束欠損性視野障害を呈し,進行増悪すると中心視野も障害され視力低下をきたす。

    〈視神経乳頭の検査〉

    うっ血乳頭の初期変化は,軸索流の渋滞による神経線維の混濁なので,早期診断は,乳頭上および乳頭周囲の網膜神経線維層の混濁・腫脹の特定にある。細隙灯顕微鏡下に乳頭辺縁から周囲網膜へ放射状に走る神経線維束の光学的反射をみる。混濁が疑われれば,光干渉断層計(optical coherence tomography:OCT)や走査レーザー施光測定計(scanning laser ophthalmoseope:SLO)による3次元眼底画像解析で確認する。

    蛍光造影眼底検査:うっ血乳頭の乳頭上毛細血管の拡張や閉塞,網膜静脈のうっ血,神経線維層の微小梗塞をとらえられるが,こうした乳頭・傍乳頭血管系の変化は腫大した神経線維による二次的変化で,うっ血乳頭に特異的ではなく,早期では異常を呈さないことがある。超音波でくも膜下腔の拡張をみるには,熟練がいる。

    〈神経放射線学的検査〉

    頭部の画像検査で,頭蓋内占拠性病変や水頭症について検査し,認めれば直ちに脳外科へ対診する。

    〈脳脊髄圧の測定〉

    脳の画像が正常なら,神経内科医に脳脊髄圧測定と髄液検査を依頼する。脳圧亢進があれば,原因検索と治療は神経内科医が中心になる。

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