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アルツハイマー型認知症

登録日:
2017-03-16
最終更新日:
2017-03-28
東海林幹夫 (弘前大学大学院医学研究科脳神経内科学講座教授)
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  • ■疾患メモ

    アルツハイマー型認知症(Alzheimer's disease:AD)は緩徐進行性の認知症疾患で,大脳皮質,海馬,前脳底部で神経細胞死,シナプス減少,アセチルコリン低下がみられ,病理学的には神経原線維変化とアミロイドβ(Aβ)(大脳皮質,脳血管)の2つの変化が特徴である。

    主要症状はエピソード記憶障害に始まる記憶・学習の障害で,失語,遂行機能障害,視空間機能障害と人格変化などの社会的認知機能の障害へ進展する。

    Aβ蓄積によるシナプス障害と神経原線維変化および神経細胞死の誘発が基本的病態である。

    ADの有病率は年齢とともに急増し,65歳以上の人口の1.7%~7%で,平均3.2%である。

    ADと軽度認知障害(mild cognitive impairment:MCI)で認知症性疾患全体のほぼ60%を占めている。

    ■代表的症状・検査所見

    【症状】

    海馬・側頭葉内側面の障害による記憶・学習障害,側頭・頭頂・後頭領域障害による失語,視空間機能障害,失行,側頭葉外側面の障害による意味記憶障害,前頭葉障害による病識・自発性低下がみられる。

    エピソード記憶がそっくり欠落することが特徴的で,取り繕いや振り返りもしばしばみられる。

    日常用いる道具の使用や複数物品の使用障害,口頭・視覚命令による動作障害など,習い覚えた動作の障害が進行する。

    仕事や家事を行う遂行機能能力低下が初期に気づかれ,進行すると行動発動の低下,保続や固執,衝動性や脱抑制となり,自己修正も困難となる。病識もなく,にこにこしている場合が多い。

    最終的に整容,着衣,食事,トイレ,入浴などのセルフケア,言葉の理解や発語もできなくなり,立つ,座る,歩くなどの基本的な運動能力の喪失へと進行し,寝たきり状態となる。

    末期では低栄養や脱水,誤嚥性肺炎などが合併する。

    経過中に行動・心理症状(behavioral and psycho-logical symptoms of dementia:BPSD)が出現し,家族・介護者の負担となっている。

    初期の抑うつ,アパシーから易怒性,暴言・暴力,焦燥・興奮,拒絶,幻覚,せん妄,不眠,徘徊などがみられ,重症では歩行障害,失禁,ミオクローヌスやパーキンソニズム,痙攣などがみられる。

    【検査所見】

    神経心理学的検査ではminimental state examination(MMSE)やclinical dementia rating(CDR)などで評価する。

    MRIでは両側海馬,後部帯状回から脳萎縮が始まり,進行とともに側頭葉・頭頂葉に萎縮が進行する。

    SPECTによる脳血流とFDG-PETによる糖代謝の検査では脳萎縮が著明でない早期から後部帯状回や楔前部に低下がみられ,進行すると海馬,側頭・頭頂葉に障害部位が拡大する。

    バイオマーカーとしてPiB-アミロイドPETで脳アミロイド蓄積が評価できる。

    脳脊髄液(CSF)Aß42値が低下し,総tau値とリン酸化tau値が上昇する。リン酸化tauは他疾患の鑑別のために保険診療で測定可能である。

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