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膵癌

登録日:
2017-03-16
最終更新日:
2017-07-18
村田泰洋 (三重大学肝胆膵・移植外科)
伊佐地秀司 (三重大学肝胆膵・移植外科教授)
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  • ■疾患メモ

    膵原発の癌腫の約90%は膵管上皮から発生する浸潤性膵管癌であり,膵癌(pancreatic cancer)とは,一般的に浸潤性膵管癌を指す。

    近年,膵癌は全世界的に増加傾向であり,わが国における膵癌の年間死亡数は,厚生労働省平成27年人口統計では3万1809人と増加の一途をたどっている。男女比は,1.5:1.0で男性に多く,60〜70歳代に罹患年齢のピークがある。

    膵癌のリスクファクターは,家族歴として膵癌,遺伝性膵癌症候群,合併疾患として糖尿病,慢性膵炎,遺伝性膵炎,膵管内乳頭粘液性腫瘍(intraductal papillary mucinous neoplasm:IPMN),腫瘍性膵囊胞,肥満が挙げられ,嗜好としては喫煙,大量飲酒が指摘されている。

    膵癌の検出ならびに正確な進展度には,MDCTを用いた造影ダイナミックCTが必須である。超音波内視鏡下穿刺吸引生検法(EUS-FNAB)による腫瘍の質的診断は,手術適応の決定や治療法の選択において重要である。

    ■代表的症状・検査所見

    症状】

    初発症状として,腹痛,腰背部痛,黄疸,体重減少などがある。

    検査所見】

    新たな糖尿病発症や血糖コントロール悪化例では,膵癌を疑い検査を行う。膵癌診療ガイドライン2016年版における膵癌診断のアルゴリズムを示した(図1)。診断法には腫瘍マーカーを用いた血清学的診断,腹部超音波検査(US),腹部CTなどの画像診断,細胞診・組織学的診断がある。

    06_30_膵癌


    診断のファーストステップとして,血中膵酵素測定,血清CA19-9,CEA,DUPAN-2,Span-1などの腫瘍マーカー測定,腹部USを行う。

    血液検査:膵型アミラーゼ,エラスターゼ1,リパーゼなどの血中膵酵素の測定は膵癌に特異的ではないが,膵癌により膵管が狭窄し膵炎をきたすことで血中に逸脱する。腫瘍マーカー測定は,膵癌診断,フォローアップに勧められ,CA19-9が進行度とよく相関し一般的に用いられるが,胆汁うっ滞をきたす良性疾患においても上昇を示す場合や血液型がLewis A抗原陰性例では偽陰性となることが欠点であり,DUPAN-2が同時に用いられる。

    腹部US:膵癌のスクリーニングに勧められる。主膵管の拡張や囊胞は膵癌の間接所見として重要であり,さらに精査を要する。これらのスクリーニング検査によって膵癌が疑われた場合,セカンドステップとして造影CT,造影MRI(MRCP)による膵癌の存在診断を行うことが勧められる。

    造影ダイナミックCT:膵癌の検出ならびに正確な進展度には必須である。ダイナミックCTの撮影は,MDCT(multi detector-row CT)を用いて,単純のみでなく,早期動脈相,後期動脈相(膵実質相),静脈相,平衡相の4相を薄層(3mm以下)スライス撮影などの規定された膵臓用の撮影プロトコールに従って施行するべきである。典型的なCT所見は,豊富な間質増生を反映し,動脈相から膵実質相では正常膵より濃染不良であり,門脈相から平衡相にかけて辺縁から緩徐に造影され,遅延性濃染を示す。

    超音波内視鏡(EUS):CTなど他の画像診断と比較すると有意に高感度であり,CT,MRIで同定できないような小膵癌の検出には有用である。膵癌を疑った場合には行うことが提案される。

    US,CT,MRIおよびEUSなどの画像診断法を用いても診断が困難な場合や,限局的な膵管狭窄が認められた場合には,内視鏡的逆行性胆道膵管造影検査(ERCP)を行う。膵管上皮内癌に対しては,内視鏡的経鼻膵管ドレナージ(endoscopic nasopancreatic drainage:ENPD)を留置した複数回の膵液細胞診が術前診断に有用であると報告されている。PET-CT検査は,膵癌診断における良/悪性の鑑別に行うことが提案される。ただし,小膵癌や微小な遠隔転移の検出においては限界があるため注意が必要である。

    細胞診,組織診断は,感度,特異度ともに高く,膵癌と他の膵疾患との鑑別に有用であり,行うことが提案される。特に,境界切除可能(borderline resectable:BR)膵癌,局所進行切除不能(unresectable,locally advanced:UR-LA)膵癌に対して化学療法,化学放射線治療などの術前補助療法を予定する場合,EUS-FNABによる病理学的確定診断が推奨されており,その正診率は90%以上と報告されている。EUSならびにEUS-FNA,ERCPによる細胞診は,他の画像診断法に比較すると侵襲的な検査であり,習熟した施設で行うことが望ましい。

    膵癌の病期分類(TNM分類)は,造影MDCTかつ/または造影MRIを行うことが推奨される。EUSは高い分解能を有し,主要血管への浸潤やリンパ節転移の有無の評価を行うことが可能であり,切除可能性の評価にも有用であることから,必要に応じて行うことが提案される。遠隔転移の有無は,造影MDCTかつ/または造影MRIを施行し評価する。もし,遠隔転移が造影MDCT,造影MRIで検出されなければ,必要に応じてPET-CTかつ/または審査腹腔鏡を施行する。審査腹腔鏡は,肝転移や腹膜播種の検出に有用であり,切除可能膵癌と診断されるも遠隔転移が否定できない場合など,必要に応じて適切な症例を選択して行うことが望ましい。

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