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失神

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  • ■緊急時の処置

    気道,呼吸,循環の安定化を図る。失神時には臥位にする。

    ■検査および鑑別診断のポイント

    【心電図】

    12誘導心電図検査は必須である。心原性失神の多くは不整脈が原因であるが,検査時に心電図異常が確認されることは少ない。不整脈の基盤となる心疾患を12誘導心電図から疑う。

    【血液検査】

    血液ガス分析は,痙攣発作との鑑別に有用である。代謝性アシドーシスや乳酸値の上昇があれば痙攣を疑う。失神と痙攣の鑑別のためであれば,静脈血ガス分析で十分である。

    【起立負荷試験(active standing test)】

    5分の仰臥位の後,10分間患者に自ら起立させ,その間心拍数のモニタリングと1分ごとの血圧を評価する。

    血圧低下・徐脈を認めれば陽性である。無症候性収縮期血圧(SBP)低下>50mmHg,もしくは症候性SBP低下>30mmHg,R-R間隔>3秒を目安とする。

    【画像】

    頭部CT:失神の原因としてくも膜下出血を疑う場合,失神に頭部外傷を合併している場合にのみ適応である。

    【リスク層別化】

    いくつかのclinical decision ruleが知られているが,いずれも感度や特異度に問題がある。リスク層別化を行い,高リスク患者の抽出に努める(1)2)

    01_09_失神

    ■落とし穴・禁忌事項

    【診察・問診】

    器質的疾患を伴わない神経反射や自律神経機能異常による失神が多く,器質的疾患は少ないため,失神は軽視されがちである。

    失神時の血圧低下は短時間で回復し,診察時には所見がないことも多い。

    失神の診察は仰臥位のみならず,坐位や立位でも行う必要がある。

    失神の原因となった病態を診療することが重要である。

    ■その後の対応

    心原性失神,器質的疾患(感染症,消化管出血など)や合併する外傷が入院適応の場合には,入院となる。

    前兆症状を有する患者に対しては,失神回避法を具体的に指導し体得させる。

    起立調節訓練法は,反射性失神の有効な治療法である。

    ■文献・参考資料

    【文献】

    1) 日本循環器学会:循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2011年度合同研究班報告)失神の診断・治療ガイドライン(2012年改訂版), 2012.

         [http://www.j-circ.or.jp/guideline/pdf/JCS2012_inoue_h.pdf](2017年4月閲覧)

    2) Moya A, et al:Eur Heart J. 2009;30(21):2631-71.

    【参考】

    ▶ D'Ascenzo F, et al:Int J Cardiol. 2013;167(1):57-62.

    ▶ Kapoor WN:N Engl J Med. 2000;343(25):1856-62.

    ▶ Hatoum T, et al:Can J Cardiol. 2014;30(6):671-4.

    【執筆者】 多村知剛(慶應義塾大学医学部救急医学教室)

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