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高齢者の適正体重とは?【適正体重の維持も重要だが,適正筋肉量の維持がより大切となる】

No.4905 (2018年04月28日発行) P.59

金 憲経 (東京都健康長寿医療センター研究所自立促進と介護予防研究チーム部長)

登録日: 2018-04-27

最終更新日: 2018-04-20

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高齢者の適正体重について。認知症などで入院が長期化した場合,粥食やミキサー食だとどうしてもカロリーが低くなり,一般的な適正体重よりかなり低くなりがちです(身長160cmでも40kg以下など)。高齢者の体重や栄養管理については,実際どの程度を目安にすればよいのでしょうか。

(千葉県 H)


【回答】

栄養状態や健康指標として,最もわかりやすくて簡単な指標は体重です。定期的に体重を量り,体重の変化を把握することは生活習慣病の診断あるいは予防のみならず,生活習慣の見直しにも活用できます。一般的に言われている適正体重は,22×身長(m)2で求められます1)〔たとえば,身長160cmの人の適正体重は,22×1.60(m)2=56.32kgです〕。

この適正体重を算出した根拠は体格指数であるbody mass index〔BMI=体重kg/身長(m)2〕です。たとえば,身長160cm,体重40kgの人のBMIは15.6〔40kg/1.60(m)2〕です。BMIと有病率の関連性を検討した研究結果では,男性22.2kg/m2,女性21.9kg/m2で有病率が最も低くなります。有病率の観点からの適正BMIは,22kg/m2で,適正体重を求めるときにこの値を採用しています1)

また,WHOと日本肥満学会では,BMI 18.5kg/m2未満を低体重,18.5~25.0kg/m2を普通体重,25.0~30.0kg/m2を過体重,30.0kg/m2以上を肥満と判定しています。さらに,18.5~17.0kg/m2未満を痩せぎみ,17.0~16.0kg/m2未満を痩せ,16.0 kg/m2未満を痩せすぎと判定しています2)。この判定基準によれば,ご質問の身長160cmで体重40kgは痩せすぎに該当します。

ここで注意すべきなのは,体重あるいはBMIによる判定には,筋肉量が反映されていない点です。加齢に伴う最も特徴的な変化は,筋肉量や骨密度の減少と脂肪量の増加です。若いときと比べて,たとえば体重50.0kgと変化がみられなくても,その中身は変わります。若者体重50.0kg,体脂肪率20.0%とすれば,体脂肪10.0kg,除脂肪体重40.0 kgです。しかし,高齢者体重50.0kg,体脂肪率30.0%の場合は体脂肪15.0kg,除脂肪体重35.0kgです。したがって,体重のみで判定せずに,体内の筋肉量を正確に評価することがより大切です。

筋肉量が減少する現象をサルコペニアと定義し,高齢期の深刻な健康問題になると指摘されています3)。しかし,人間の筋肉量を正しく量ることは難儀であり,どの程度減少した状態を筋肉減少症(サルコペニア)と定義するかの判断が困難な側面もあります。学術的に表現するとDXA(dual energy X-ray absorptiometry)法より求めた骨格筋量〔腕の筋肉量+脚の筋肉量(kg)〕を身長(m)2で除した骨格筋量指数を算出し,男性7.26kg/m2,女性5.45kg/m2以下をサルコペニアと定義します4)。よって,適正体重の維持も重要ですが,適正筋肉量の維持がより大切です。

【文献】

1) Matsuzawa Y, et al:Diabetes Res Clin Pract. 1990;10(Suppl 1):S159-64.

2) World Health Organ Tech Rep Ser. 1995;854:1-452.

3) Rosenberg IH:Am J Clin Nutr. 1989;50:1231-3.

4) Cruz-Jentoft AJ, et al:Age Ageing. 2010;39 (4):412-23.

【回答者】

金 憲経 東京都健康長寿医療センター研究所自立促進と介護予防研究チーム部長

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