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非燃焼・加熱式タバコの評価と今後の課題【OPINION】

No.4882 (2017年11月18日発行) P.20

大島 明 (大阪大学大学院医学研究科社会医学講座環境医学招聘教員)

登録日: 2017-11-20

最終更新日: 2017-11-15

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  • はじめに

    非燃焼・加熱式タバコは、2014年11月フィリップモリスジャパンがiQOSのテスト販売を開始して以来、ここ数年の間に日本において急速に普及しつつある。iQOSの他にもJTのPloom TECH、BATのgloも販売されるようになった。2003年Hon Likによって開発され実用化された電子タバコは専用カートリッジ内のニコチンを含む液体を熱して霧状化しエアゾールを吸引するのに対して、iQOSはプロピレングリコールに浸したタバコ葉を加熱ブレードで直接加熱する。日本において、ニコチンを含む電子タバコは医薬品として規制され、現時点で製造販売を認可されたものはなく、個人輸入の形でしか使用することができないのに対して、非燃焼・加熱式タバコは、「パイプたばこ」として認可されている。

    フィリップモリスジャパンによると、「2016年4月にiQOSの全国販売を開始して以来、iQOSの販売台数は300万台を超え、iQOSに完全に移行したユーザーは約100万人を達成した(2016年12月現在)。マールボロ・ヒートスティックのシェアは全国で7.6%、東京で約9.5%を記録している(2017年1月現在、小売販売ベース)」とのことである。電子タバコは英国や米国で広く普及し、その利害に関する研究と熱い議論がなされてきたが1)、非燃焼・加熱式タバコは、英米では日本ほど普及していないため、あまり検討されていない。

    非燃焼・加熱式タバコの使用実態の把握

    日本における喫煙行動の調査は、成人に関しては1986年から国民健康・栄養調査により、未成年者に関しては1996年から厚生労働科学研究として実施されている。しかし、電子タバコや非燃焼・加熱式タバコに関する項目が設けられていないため、その使用実態を把握することができない。

    このような中で、Tabuchiらは、2015年1月31日から2月17日にかけて日本の一般住民を対象として「電子タバコ」(非燃焼・加熱式タバコを含む)に関するインターネット調査を実施した2)。その結果、15~69歳の男女において48.0%が「電子タバコ」を知っており、 6.60%が使用経験あり、 1.29%が直近30日以内での使用あり、 1.33%が習慣的に使用していた。「電子タバコ」の使用経験がある者の内訳(重複回答あり)は、ニコチン含有電子タバコが33.4%、ニコチン非含有電子タバコが72.3%、ニコチン含有か非含有か不明の電子タバコが14.5%、Ploomが7.8%、iQOSが8.4%であった。

    非燃焼・加熱式タバコの使用者への害

    iQOSの毒性評価に関しては、Philip Morris Internationalの研究者による iQOSのエアゾールと紙巻タバコの主流煙との化学分析の比較やin vitroでのヒト気管支上皮細胞への影響の研究などによって、iQOSのエアゾールは従来の紙巻きタバコ煙に比して毒性が低いことが示された3)。2017年9月には、国立保健医療科学院のBekkiらが、iQOSと標準紙巻タバコの主流煙の化学分析を比較して、iQOSから紙巻きタバコと同程度のニコチンが検出されたのに対して、TSNAs(タバコ特異的ニトロソアミン)の濃度が5分の1程度にまで低減され、一酸化炭素も100分の1程度であったことを示した4)

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