高齢者では,時に軽度の貧血が認められることがあります。高齢になると骨髄異形成症候群の頻度が増加することもあり,どの程度までの検査が必要か判断に苦慮することもあります。日常診療における高齢者の貧血への対応に関して,長崎大学・宮﨑泰司先生にご教示をお願いします。
【質問者】
石澤賢一 山形大学医学部附属病院第三内科教授
厚生労働省による「平成27年国民健康・栄養調査報告」(2017年3月刊行)では,貧血治療を受けていない人の採血検査において,70歳以上の人々では,男性のヘモグロビン値13g/dL未満の割合は21.4%,女性のヘモグロビン値12g/dL未満の割合は22.4%と報告されています。一般的な貧血の定義を当てはめると,1/5以上が貧血ということになります。高齢者貧血のヘモグロビン基準値を男性12g/dL,女性11g/dLとすると,それ未満の割合はそれぞれ9.9%,6.1%となります。
こうしたこともあって,特発性造血障害に関する調査研究班による「特発性造血障害疾患の診療の参照ガイド(平成28年度改訂版)」では,高齢者の場合は,男性においては12g/dL,女性においては11g/dL未満を骨髄異形成症候群(myelodysplastic syndromes:MDS)診断における貧血の基準と設定しています。
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