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ホウ素中性子捕捉療法の適応と今後の展望【浅在で直径5~6cm程度の腫瘍が適応。標準治療前のダウンステージングに期待】

No.4871 (2017年09月02日発行) P.59

早川和重 (北里大学医学部放射線科学「放射線腫瘍学」主任教授)

髙井良尋 (南東北BNCT研究センター センター長)

登録日: 2017-08-31

最終更新日: 2017-08-29

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  • 最近,ホウ素中性子捕捉療法(boron neutron capture therapy:BNCT)が注目されており,難治性疾患に対して期待が寄せられています。このBNCTの適応疾患と今後の展望について,南東北BNCT研究センター・髙井良尋先生にご教示をお願いします。

    【質問者】

    早川和重 北里大学医学部放射線科学「放射線腫瘍学」 主任教授


    【回答】

    BNCTとは理論上,がん細胞1個1個を破壊することのできる従来の放射線治療とはまったく異なる機序を利用した「がん細胞選択的治療」とも呼ぶべき画期的放射線治療です。それ自身ではほとんど生物作用がなく低毒性で,がん細胞に親和性のあるホウ素(10B)化合物〔現在,治験に使用されている化合物はpara-boronophenylalanine(BPA)〕を投与し,同様にそれ自体では細胞障害性の少ないエネルギーの低い熱・熱外中性子を照射することによってがん細胞内で起こる,ホウ素と熱中性子との核反応〔核変換反応:10B(n,α)7Li〕を利用した治療です。発生するアルファ粒子とリチウム核の飛程は,それぞれ9μm,4μm程度であるため,がん細胞1個の中で起こる粒子線治療と言うことができます。

    現在まで,中性子源として原子炉を用いていましたが,原子炉は病院に併設することができず,医療として確立するには至りませんでした。そこで京都大学と住友重機工業は共同でBNCT用の加速器を開発し,第1相臨床試験を行いました。南東北総合病院は,同様のシステムを病院併設としては世界で初めて導入し,2016年1月より再発膠芽腫,7月より手術不能・再発頭頸部癌に対して第2相臨床試験を行っています。

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