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日本での無期懲役・仮釈放と死刑制度の運用状況は?【現状では相対的無期懲役刑制度と死刑制度が併存,近年は死刑適用拡大傾向にあるが,これは国際的に見ると特殊な状況】

No.4869 (2017年08月19日発行) P.64

瀬木比呂志 (明治大学法科大学院教授)

登録日: 2017-08-16

最終更新日: 2017-08-15

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  • 2016年に発生した神奈川県相模原市の障害者施設殺傷事件の法廷を見聞し,量刑について私なりに考えているところですが,被告が有罪,かつ死刑ではなかった場合,無期懲役刑ではなく,終身刑にはならないのでしょうか。日本には終身刑は存在しないというのは本当ですか。

    (神奈川県 W)


    【回答】

    日本にもいわゆる無期懲役の制度はありますが,日本のそれは相対的無期懲役刑制度であり,仮釈放の可能性が残されています。国際的にも,この制度を採る国が多くあります。一方,米国,オランダ,中国等には,仮釈放のない絶対的無期懲役刑制度(つまり,厳密な意味での終身刑)があります。

    もっとも,相対的無期懲役刑制度を採る場合であっても,仮釈放の資格が認められる最低の刑期が長くなれば,実際上は,出獄の可能性は低くなっていきます。ただ,相対的無期懲役刑制度を採る以上,この期間には一定の限度があり,25年程度が,各国で実際に定められている上限のようです。日本ではこの期間が10年と比較的短くなっています(刑法28条)が,実際に仮釈放が認められるまでの期間は,近年は,25年程度と以前より長くなっているようです。

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