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(2)慢性呼吸器疾患への換気補助療法の適応 [特集:在宅酸素療法・換気補助療法の現在]

No.4762 (2015年08月01日発行) P.42

陳 和夫 (京都大学大学院医学研究科・医学部呼吸管理睡眠制御学講座特定教授)

登録日: 2016-09-08

最終更新日: 2017-02-15

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  • 慢性呼吸器疾患の在宅換気補助療法としては気管切開下の人工呼吸と非侵襲的陽圧換気(NPPV)療法があり,後者の患者数が多い

    換気補助療法が行われている慢性呼吸器疾患としてはCOPD,結核後遺症や脊椎後側弯症などの拘束性胸郭疾患が主要疾患である

    換気補助療法が行われている患者の大部分が覚醒時に高二酸化炭素血症を示し,夜間睡眠中に呼吸障害を示す

    換気補助療法が行われている慢性呼吸器疾患の睡眠呼吸障害では睡眠時無呼吸よりも,夜間睡眠中,特にレム(REM)睡眠期の高度の低換気が問題になることが多く,その管理が重要である

    1. 慢性呼吸器疾患と換気補助療法

    慢性呼吸器疾患患者の換気補助療法は在宅にて行われることが多いので,在宅換気補助療法について述べる。在宅人工呼吸の健康保険適用は気管切開下人工呼吸が1990年に始まり,1998年に鼻マスク・顔マスクを介した非侵襲的陽圧換気(noninvasive positive pressure ventilation:NPPV)療法の保険適用が始まった。同年には,睡眠時無呼吸症候群(sleep apnea syndrome:SAS)に対する持続陽圧(continuous positive airway pressure:CPAP)療法も保険適用が開始された。
    CPAPは閉塞性睡眠時無呼吸(obstructive sleep apnea:OSA)でみられるような,閉塞あるいは狭窄した気道を開存する効果がみられるが,換気補助は通常できない。NPPVは鼻または顔マスクを介して,挿管下あるいは気管切開下人工呼吸と同様に換気補助は可能であるが,気道確保はできておらず,喀痰などの排出は患者自身の喀出力で行わなければならない1)。なお,現状では気管切開下に換気補助が行われている慢性呼吸器疾患患者は,神経筋疾患患者と比べて少ないため,本稿では主にNPPVによる換気補助療法について述べる。
    診療報酬上,在宅NPPVは,①在宅人工呼吸とは,長期にわたり持続的に人工呼吸に依存せざるをえず,かつ,安定した病状にある者について,在宅において実施する人工呼吸療法をいう,②対象となる患者は,病状が安定し,在宅での人工呼吸療法を行うことが適当と医師が認めた者とする,なお,SASの患者は対象とならない,とされている(在宅人工呼吸指導管理料)2)
    慢性呼吸不全患者の低酸素血症に対しては,原因疾患の治療とともに酸素療法が行われることが多い。呼吸不全の病態がさらに進行すれば高二酸化炭素血症(PaCO2 が45mmHg以上)を伴うことが多くなり,呼吸性アシドーシスを併発して様々な症状を伴ってくる。また,高二酸化炭素血症が高度になると,酸素投与によりさらなる高二酸化炭素血症の悪化をみてCO2 ナルコーシスの危険を伴うため,酸素投与を行うことが困難になる。NPPVは,鼻マスクあるいは顔マスクを介して吸気陽圧(inspiratory positive airway pressure:IPAP)と呼気陽圧(expiratory positive airway pressure:EPAP)の圧差が通常の人工呼吸器のプレッシャーサポート圧と同様に患者の換気を補助して,大きな1回換気を可能にする。このことによってPaCO2 値を下げ,結果としてPaO2 値を上昇させ,また,CO2 をコントロールしてO2 投与も可能にする。NPPVは肺胞低換気,呼吸調節異常,呼吸筋負荷,睡眠呼吸障害の改善に効果がある1)
    『在宅呼吸ケア白書2010』では,わが国の在宅NPPV施行疾患は慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive pulmonary disease:COPD) 26%, 肺結核後遺症23%, 神経筋疾患18%が頻度の高い3疾患となっている3)。脊椎後側弯症は肺結核後遺症とともに拘束性胸郭疾患(restrictive thoracic disease:RTD)の代表的な疾患であるが,在宅NPPVとしては5%を占める代表的疾患である。そのほか,在宅NPPVで管理する呼吸器疾患としては,CPAP治療では対応困難である重症の肥満低換気症候群〔obesity hypoventilation syndrome:OHS,患者のbody mass index(BMI)が30kg/m2以上であり,覚醒中のPaCO2値が45mmHgを超える患者群〕がある1)

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