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(3)家庭でもできる減塩のコツ [特集:減塩から始める予防医療]

No.4755 (2015年06月13日発行) P.30

竹田博幸 (調理師)

登録日: 2016-09-08

最終更新日: 2017-02-17

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  • 減塩食は調味料の使い方1つで食材のうま味が生かされます

    塩分を多く含む加工食品は脱塩することで食材の持ち味を引き出すことにつながります

    手間を惜しまず,食材や調味料を正確に計量する習慣を持つことが大切です

    1. 減塩食とは

    今や減塩食は「美味しくて体に良い」と注目を集めています。また,病気を治療中・入院中の患者さんにとっても食事は楽しみの1つでしょう。美味しい食事も治療の一環ですので,全量摂取することに意味があります。
    減塩食は,以下の4つに分類されます。
    ①‌無塩食:無塩なので,天然のだしや食材のうま味,持ち味を生かし,酸味や香辛料を加えてメリハリをつけることが大切です。また,焼く,揚げる,炒めることで凝縮した奥行きのある味わいになります。ちょっとした工夫,可能性を試みることで未知の世界が開けます。
    ②‌高度制限食:減塩食を美味しく作るための原点となります。1日当たり1~3g未満の塩分で作るので,食材の持ち味やうま味を最大限に生かし,限られた調味料であっても複数の料理を調和のとれた味に仕上げるようにします。食材は余分な水分を除き,煮汁を煮つめるなどの工夫をすることで,満足のいく味に近づけることができます。
    ③‌中等度制限食:無駄のない調味料で作る減塩食です。1日当たり4~5g未満の塩分で作る,調理のコツを生かしたこだわりの食事で,体に良く,美味しい減塩食ができます。
    ④‌軽度制限食:1日当たり6g未満の塩分で作る一般的な減塩食です。生活習慣病を予防する効果もあります。1食当たりにすると2g未満の塩分で,エネルギー600kcal以下(ご飯150gを含む)の塩分を控えた食事です。

    2. 塩分を控えるためのコツ

    1 天然だしの特徴

    天然だし用の食材には,こんぶ(グルタミン酸),かつお節(イノシン酸),乾しいたけ(グアニル酸)といった代表的なものが挙げられますが,ほかにもうま味成分が含まれている煮干し,干しえび,貝類などがあります。天然だしは単独で使うのではなく,こんぶやかつお節のようにいくつかの食材を組み合わせて使うことで相乗効果が得られます。
    天然だしの特徴は,少ない分量でもさっぱりとしたうま味でコクもあり,味の奥行きが広まり,後味に持続性を楽しむことができることです。また,魚以外でも牛スネ肉とたまねぎ,鶏がらと長ねぎなどといった複数の食材を組み合わせることで相乗効果が生まれ,少しの塩分で持ち味やうま味を引き出す効果があります。
    美味しい天然だしを取るために食材を多く使用すると,風味が豊かになり,うま味の濃度も高くなります。しかし,食材によっては味覚にあまり変化はなく,必要以上に使用すると,本来食材が持っている塩分によって食塩の過剰摂取につながることもあります。

    2 旬や新鮮な食材のうま味も調味料の1つ

    日本には四季があり,1年を通して様々な食材を楽しめます。食材の栽培技術や流通が発達したことから,新鮮な食材を家庭でも直接手に入れることができ,旬の時期になると価格も安定するので,手頃な価格で求めることができます。食材の持ち味,うま味,風味が一段と豊かになり,良質な栄養分を効率よく摂取できるので栄養価も上がります。
    また,新鮮な食材も同じように,持ち味やうま味を最大限に生かすことができます。少ない調味料で季節感や風味を味わうことができることは,私たちの心身に良い影響を及ぼします。また,完熟した食材の中には旬の食材とは違い,日が経つことで甘味やうま味が凝縮されるものもあるので,少量の塩分を加えただけで奥行きがある,食材を生かした味に仕上がります。

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