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障害者は最低賃金法の除外対象か?【雇用形態が「労働者」であるか否かによって決まる】

No.4857 (2017年05月27日発行) P.62

松井亮輔 (法政大学名誉教授/日本障害者リハビリテーション協会副会長)

登録日: 2017-05-24

最終更新日: 2017-05-23

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  • 新聞報道によると,ある障害福祉サービス事業所の硬式野球ボールの補修工賃は時給169円とのこと。これは最低賃金法に抵触しないのでしょうか。

    (埼玉県 I)


    【回答】

    「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律」(障害者総合支援法)に基づく障害福祉サービスには,一般企業等での就労が困難な障害者に,就労する機会とともに,知識および能力の向上のために必要な訓練等を提供する「就労継続支援」事業があります。障害者が利用するにあたり,雇用を原則とするA型事業と,雇用関係がないB型事業から構成されます。前者の場合,利用者は労働者とみなされるため,最低賃金法をはじめとする労働法が適用されるのに対し,後者の場合,利用者は福祉サービスの対象者であって労働者とみなされず,労働法は適用されません。

    したがって,ご質問の「障害福祉サービス事業所」がA型事業を行っている場合,2016年度の埼玉県の最低賃金時間額845円(2016年10月1日発効)を下回っていることから,最低賃金法に抵触することになります。ただし,最低賃金法第7条に基づき,事業者が都道府県労働局長(具体的には同事業所を管轄する労働基準監督署)の許可を受けたときは,「精神又は身体の障害により著しく労働能力の低い者」については,その労働能率に応じ最低賃金を減額できることになっています1)

    つまり,当該事業所の硬式野球ボールの補修に携わる障害者の労働能率が,「同一または類似の業務に従事していて,かつ最低賃金額と同程度以上の額の賃金が支払われている障害のない従業員」のうち最も能力が低い者と比べ,仮に20%ということであれば,実際にはともかく,少なくとも理論的には埼玉県の最低賃金時間額845円の20%,169円まで減額できることになります。

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