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(5)成人インフルエンザの臨床検査 [特集:そこが知りたい! インフルエンザ検査]

No.4830 (2016年11月19日発行) P.47

石田 直 (倉敷中央病院呼吸器内科主任部長)

登録日: 2016-11-18

最終更新日: 2016-11-15

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  • リスクが高い人では,インフルエンザ罹患後に合併症が起こりやすい

    インフルエンザに特異的な血液検査所見は存在しない。白血球数やCRPが高値を呈する場合は,細菌感染の合併を考慮する

    肺炎を合併したときは,胸部単純X線撮影や,時に胸部CT撮影が必要となる

    1. インフルエンザと臨床検査

    インフルエンザは,冬季に流行する代表的な感染症であるが,合併症をしばしば引き起こす。合併症のないインフルエンザ患者では,臨床症状から診断・治療が行われ,検査が施行されることは少ない。そこで本稿では,主に合併症が疑われた場合の臨床検査について概説する。後述するように,インフルエンザの合併症としては肺炎が最も重要であるため,本稿でも特に肺炎の検査を中心に解説する。なお,ウイルス学的検査については別項が設けられているのでここでは触れない。

    2. インフルエンザの合併症

    インフルエンザは,続発する合併症をしばしば起こし,高齢者の死亡の原因となっている。インフルエンザの合併症としては,一般に表1に示すようなものが挙げられる。米国では,季節性インフルエンザの合併症を起こしやすいハイリスクグループとして,表2のような人々が挙げられており,ワクチン接種が勧められている1)。これらの合併症の中では,肺炎の頻度が最も高く注意が必要である。国立感染症研究所では,インフルエンザ関連死亡迅速把握システムを構築し,全国の21大都市におけるインフルエンザおよび肺炎による死亡報告を集計しているが,2015/2016シーズンにおいては,東京,横浜,神戸,広島,北九州で超過死亡(インフルエンザが流行したことによって,インフルエンザおよび肺炎による死亡がどのくらい増加したかを示す推定値)が認められている2)
    表3は,2014/2015シーズンに筆者の病院において,インフルエンザ関連の原因で入院した成人患者の内訳を示したものである。やはり肺炎が最も多く,高齢者の全身状態不良がそれに続いたが,基礎疾患として有している慢性肺疾患の増悪や心不全もみられ,脳症と思われる症例もあった。これらのうち3例が死亡した(肺炎2例,横紋筋融解症1例)。





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