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小児癌の個別化治療に向けた取り組み 【晩期合併症が少なく,有効性の高いゲノム医療による治療の開発に期待】

No.4801 (2016年04月30日発行) P.57

橋井佳子 (大阪大学小児科講師)

大薗恵一 (大阪大学小児科教授)

登録日: 2016-04-30

最終更新日: 2016-10-26

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小児癌に対する行政の取り組みは,2012年にがん対策基本計画において重点課題とされ,13年には小児がん拠点病院が指定された。さらに14年に小児癌治療を専門とする100以上の大学,小児病院などが結集し,日本小児がん研究グループ(JCCG)が設立された。このグループには幅広い領域の専門家が参加し,日本全体で小児癌の最良の治療法の確立をめざす研究を行うことが可能となった。この組織の役割において,ゲノム医療の実現に向けた研究(バイオバンク・ジャパン)の対象として小児癌が含まれることとなり,子ども個人の遺伝情報に基づいた最適な医療の実現が可能となる。
小児癌の5年生存率は80%を超えた(文献1)。治療によりもたらされる晩期合併症の問題はさらに重要となり,我々は,良い未来を小児癌患者のために準備しなければならない。
近年の治療法の開発により晩期合併症が減少し死亡率の改善がみられてはいるが,ゲノム医療はさらに推進しうるものと期待される。筆者らは小児癌に対する免疫学的な治療法の安全性と有効性を報告(文献2)した。今後は,小児という免疫学的多様性を持つ集団に,さらにゲノム医療による個別医療を組み合わせることで,より晩期合併症が少なく有効性の高い治療の開発を進めることが期待される。

【文献】


1) Armstrong GT, et al:N Engl J Med. 2016;374(9):833-42.
2) Hashii Y, et al:Leukemia. 2012;26(3):530-2.

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