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食道癌における内視鏡外科手術 【求められるVATSの胸部・頸部手術精度向上】

No.4793 (2016年03月05日発行) P.55

山下継史 (北里大学外科講師)

渡邊昌彦 (北里大学外科教授)

登録日: 2016-03-05

最終更新日: 2016-10-26

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食道癌における内視鏡外科手術の導入が進んでいる。video-assisted thoracic surgery(VATS)内視鏡外科手術の最大の長所は低侵襲,整容性における臨床的有用性に求められるが,VATS食道切除術に関しては低侵襲性についての見解が一定していない(文献1)。創が小さく疼痛も少ないが,肺合併症減少については有用性が示されておらず,食道癌手術においての肺合併症減少には,腹部操作での内視鏡外科手術が影響している可能性が示されている(文献2)。一方,VATS食道切除術は手術の精度を上げるのに大いに役立ってきた。リンパ節郭清個数の増加が報告(文献3)されている。合併症減少に明確な有用性が示せなくとも,手術の精度向上に寄与するのなら,その効能は大である。
食道癌の合併症には反回神経麻痺が大きく影響する。反回神経麻痺は,肺炎など様々な合併症を派生するからである。反回神経麻痺を回避するには,精度の高い手術が必要なことは言うまでもない。胸部から頸部にまたがる手術のため,VATSによる胸部手術精度の向上だけではなく,頸部からの手術精度の向上も求められる。気縦隔を用いた頸部からの内視鏡外科手術も試みられている。
究極の食道癌手術として非開胸食道切除術をめざした基礎的研究も進み,ハイビジョンカメラにより縦隔内微細解剖がさらに明らかになってきた。理想的な食道切除術が完成する日は近いかもしれない。

【文献】


1) Safranek PM, et al:Br J Surg. 2010;97(12):1845-53.
2) Briez N, et al:Br J Surg. 2012;99(11):1547-53.
3) Dantoc M, et al:Arch Surg. 2012;147(8):768-76.

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