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造血幹細胞移植後HHV-6脳炎 【発症早期からの抗ウイルス薬投与がきわめて重要】

No.4788 (2016年01月30日発行) P.57

安川正貴 (愛媛大学血液・免疫・感染症内科学教授)

登録日: 2016-01-30

最終更新日: 2018-11-27

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同種造血幹細胞移植後には,様々なウイルスの再活性化が生じる可能性がある。そのうちのひとつがヒトヘルペスウイルス6型(HHV-6)である。HHV-6の再活性化は移植後患者の30~60%と高頻度に認められ,最も重篤な症状がHHV-6脳炎である。同種造血幹細胞移植後のHHV-6脳炎発症率の報告は0.96~11.6%と様々であるが,決して稀な疾患ではないことは明らかである。特に臍帯血移植は危険因子であることが知られている。
発症時期は,移植後2~6週間の比較的早期であることが多い。血漿中のHHV-6ゲノムコピー数の高値とHHV-6脳炎発症との相関が明らかにされており,HHV-6再活性化の定期的なモニタリングは発症予測に役立つと考えられる(文献1)。
初発症状としては,見当識障害や近時記憶障害などが特徴的で,発熱,頭痛,痙攣,意識障害をきたすことも多い。診断は,臨床症状に加え,髄液のHHV-6 DNA PCR検査が重要である。髄液HHV-
6ゲノムコピー数と重症度との相関が報告されているので,定量的PCR法の実施が望ましい。MRIによる画像診断もHHV-6脳炎の診断に有用である。つまり,海馬・辺縁系に異常信号を認め,急性辺縁系脳炎の所見を呈することが多い。
治療は,早期にガンシクロビルまたはホスカルネットを投与する。単純ヘルペス脳炎に用いるアシクロビルの効果は望めない。抗ウイルス薬の投与が遅れることで,HHV-6脳炎の予後が不良になることが明らかにされていることから,発症早期の治療開始がきわめて重要である。

【文献】


1) Ogata M, et al:Clin Infect Dis. 2013;57(5):671-81.

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