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肛門扁平上皮癌の化学放射線療法

No.4766 (2015年08月29日発行) P.52

唐澤克之 (都立駒込病院放射線診療科治療部部長)

登録日: 2015-08-29

最終更新日: 2016-10-26

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肛門管から発生するがんは扁平上皮癌の割合が高く,下部直腸(腺癌が多い)と隣接した部位にあるものの,組織型が異なる。そしてHPV感染が関連していることも多く,扁平上皮癌であることと併せて放射線治療に対する感受性が高い。また化学療法にも反応するため,欧米では30年ほど前から化学放射線療法が一般的であった(文献1)。非手術療法のメリットは肛門の温存で,患者のQOLに大きく貢献する。一方,わが国では発生頻度も低かったため,長らく肛門管癌は直腸癌の一部と考えられてきており,手術療法(主に腹会陰式直腸切断術)が主体に行われ,化学放射線療法が一般的に用いられ出したのは今世紀に入ってからであった。
標準的に使用される薬剤はマイトマイシンCと5-FU製剤で,放射線治療は原発巣と鼠径リンパ節も含めた骨盤リンパ節の範囲をターゲットに含める。局所の制御率は7~9割にも達し,ほぼ同等の肛門温存率が期待される。手術は救済治療として位置づけられる。主な有害事象としては,骨髄抑制と腸炎,および会陰部の皮膚炎である。最近では腸管や皮膚への線量を減らす目的で強度変調放射線治療(IMRT)も行われるようになり,抗腫瘍効果を落とさずに重篤な有害事象を減らすことに成功している(文献2)。米国のガイドラインでも,施行可能な施設ではIMRTの使用を推奨している(文献3)。肛門扁平上皮癌に対する化学放射線療法は,患者のQOL向上に役立っている。

【文献】


1) Bartelink H, et al:J Clin Oncol. 1997;15(5):2040-9.
2) Kachnic LA, et al:Int J Radiat Oncol Biol Phys. 2013;86(1):27-33.
3) [http://www.nccn.org/professionals/physician_gls/pdf/anal.pdf]

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